いつものように中国メディアを漁っていると、「シートリップが同社初のグランピングリゾートを開設:農村に年間500万元の収益をもたらす」という記事がありました。
グランピング(glamping)とは、グラマラス(glamorous)とキャンピング(camping)を組み合わせた造語だそうです。
知り合いも「家族で楽しめるおしゃれでモダンなキャンプ施設がどこどこにオープンしたから週末に行ってきた」というコメントはなかったけど、それらしい写真を何枚も微信(ウィーチャット)のモーメンツでアップしていました。
記事はこんな感じです。
7月3日、シートリップは安徽省六安市金寨大湾村にグランピングリゾートを正式にオープンした。これは、シートリップがいくつかの「農村観光促進プロジェクト」に投資すると発表した後の、最初のプロジェクトだ。
今年3月、シートリップは「農村観光促進プロジェクト」を打ち出し、農村地区の観光産業支援のために投資する10億元(170億円)を準備し、100箇所で農村観光を強化し、さらに1万人の農村観光活性化のための人材を育成する施策を打ち出した。その中でも、農村地区でのハイエンド宿泊施設のベンチマークとなるブランド「シートリップバケーションファーム」を10種類作成し、農村地区での宿泊体験を向上させることがプロジェクトの最優先事項となっている。

「農村観光は農村地域の活性化に必須であり、シートリップがやりたいことは、農村観光地における宿泊施設の弱点を補い、観光収入の全体的な底上げを牽引することだ。」 シートリップの取締役会長であり、バケーションファーム創設者である梁氏は、「シートリップは継続的な投資を行う公共福祉的なプロジェクトとして、自社の資金、技術、人材を投入し、さらにトレーニングやマーケティング支援を行うことで、安徽省六安市金寨の観光収入の増加を支援する。」と述べている。
梁氏は、シートリップ初のバケーションファームを六安市金寨大湾村に作った理由についてこう語った。
「大湾村には豊かな観光資源があり、交通の便やインフラでも強みがある。もしハイエンド宿泊施設産業の面で、サービスや販売を向上させることができれば、経済効果は非常に期待でき、経済発展に伴い地元の雇用環境も大きく改善させることができる。」

梁氏は、このバケーションファームはシートリップの有益な試みであり、同社はこれを単なる商業的プロジェクトとして扱うのではなく、商業は二の次であり、より重要なのは、このバケーションファームプロジェクトを業界のモデルにして農村観光全体への効果を促進する役割を果たし、そして農村活性化のための国家戦略に貢献したいと考えている。
※2021年4月末中国政府は「中華人民共和国郷村復興振促進法」という新しい政策を発表した。

今年4月にスタートしたバケーションファームは敷地面積1万2千平方メートル、シートリップの子会社であるリゼンチームが建設から運営までを包括的にマネジメントしており、建設開始からオープンまでわずか75日だった。ヴィラの建築品質、室内設備、サービスは、5つ星リゾートホテルを基準にしており、建物の装飾材料の選択基準も、現地の環境保護要求をはるかに上回るものとなっている。
現在「金寨大湾村」の第一期分の10室のヴィラ、崖をテーマにしたレストラン、および総合サービスセンターはすでに営業している。第二期分も開発の進捗に合わせて順次、稼動していく予定だ。
ちなみにシートリップのアプリでこのバケーションファームのヴィラ一泊の値段を見ると、1,200元〜2,000元弱。星野リゾート富士山の半額程の料金です。

シートリップのハイエンド宿泊施設運営ブランドとして、リゼンチームは「シートリップバケーションファーム」のサービス運営と管理を担当している。
「当社のハイエンド宿泊施設システム、IT技術、マーケティング支援を周辺の農場や民宿施設とも共有し、さらに、地元人材を積極的に採用し、雇用で支援していく。例えば、この農場では、地元住民、特に比較的困難な家族を優先的に雇用しています。」
「大湾村のほとんどの若者は地元を離れ、都市部に出稼ぎに出ていているため、そんな若者が地元に戻って働きたいと思えるように、一般より20%高い賃金を支払っています。」
シートリップの副社長でありリゼンチームのCEOである陸氏は述べる。
シートリップによると、プロジェクト第一弾でもある大湾村バケーションファームは、同社のネット販売という優位性を活かしていることもあり大きな注目が向けられている。ハイエンドな客層を取り込むことで、プロジェクトが正式にスタートされた後は、毎年500万元(8000万円)以上の観光収入を同地域にもたらすことが期待されている。
「シートリップバケーションファームのブランド名がより多くの人に認知され、受け入れられることを願っています。そして農村活性化の責任が社会全体に浸透し、田舎の美しい物語がより多くの人々の間で語られるよう、努力してまいります。」シートリップCEOの孫潔さんは締めくくった。

おわり
別の記事でシートリップの創業者のストーリーについてお話ししています。もし興味があればこちらも読んでみてください。
「日本のビジネスホテル王はアパ会長、では中国のビジホ王は?それはシートリップの創業者だった」
2005年秋、海南島の亜龍湾に面したリゾートホテル「カクタスリゾート」のすぐ前に広がるビーチには、自分の他にはロシア人観光客が3人しかおらず、大自然をほぼ独り占めできる最高に贅沢な環境がありました。
2010年に中国政府主導で海南島を「東洋のハワイ」にするための大規模開発が始まる数年前だったので、マリオットもリッツカールトンもなかったし、そもそも人がいなかった。
ビーチで日光浴をしていても、たまに目の前のビーチを通り過ぎていくのは、全身真っ黒に日焼けした地元少数民族の人たちだけ。

その後、中央政府による亜龍湾大開発の掛け声と共に中国全土から金と人が舞い込み、2013年に同じビーチに行った同僚が送ってきた写真を見ると、あの真っ白だった砂浜は人だかりの山、長袖長ズボンと黒靴姿で常夏のビーチを歩くおじさん団体の姿が写っていた。
2013年といえば、胡錦濤から今の習近平に国家主席のバトンが渡され、1つの時代が終わったと誰しもが感じた年でした。と同時に、それまで寝る間も惜しんで無我夢中に働いてきた中高年の中国人たちも、ここらで一休みしようかと「旅行」や「バケーション」などの余暇を楽しみ始めた時期でもありました。
日本にやってくるインバウンド中国人観光客が急に増えたと感じるようになったのも2013年からだったのではないでしょうか。