牛丼(牛肉飯)は日本を代表するファストフードですが、では中国の牛肉麺はどのようなものかご存知ですか?

牛骨ベースのスープで、トッピングに刻み香菜(パクチー)とペラペラの牛肉がのっている。麺はコシがあり、硬め好きな私にはぴったりです。唐辛子たっぷりのラー油が置かれていることが多いため味変アイテムとして使用できる。
私が上海に来たばかりの頃は一杯の値段が3.5元(60円)でしたが、毎年1元ずつ値上がりし、今では20数元になっています。
中国に来た日本人なら大体みんな食べたことがあるほどの大衆ファストフードなため、来た当初の牛肉麺の値段を聞けば、いつ頃中国に来たのかがわかります。
まあ2元と答えた人はさすがにいませんでしたが。
さて今回は、中国メディア「華商韜略」から「日本の牛肉飯(牛丼)は中国の牛肉麺に勝てない?75億円の損失を出した元人気店吉野家に何が起こったのか」を紹介します。
中国に牛丼を初めて持ち込んだ吉野家
1992年、北京に最初の吉野家の看板が掲げられ、パンやハンバーガーが氾濫していた中国のファストフード市場に、アジアの白米文化の到来を告げた。以来、吉野家の足跡は北京から全国各地へと広がっていった。
しかし、中国に上陸してから20年近くが経過し、コスパの悪さや単調な味が飽きられ、吉野家の人気に陰りが見えてきた。吉野家は、店舗の閉鎖というジレンマに直面し始めた。新型コロナウイルス流行の影響で吉野家の状況はさらに厳しくなり、市場からの撤退も検討された。

今年の4月14日、吉野家ホールディングスは2020年の決算を発表した。財務報告書によると、吉野家は2020年に最大75億円(約4億5,000万人民元)の純損失を計上した。
この損失は、吉野家の海外店舗の6割を占める中国店舗の撤退が大きく影響している。吉野家の中国事業は現在、北部と南部の市場に分かれている。北部市場と香港は合興集団が運営し、南部市場は日本の吉野家が直営している。
その昔、中国大陸初の吉野家では、週末になると1日2000杯の牛丼を販売した記録がある。吉野家の牛丼は当時6.50元と値段は高かったが、中国の消費者に人気があった。
アメリカ式ファストフード(KFCやマクドナルド)の華やかさが薄れ、さらにコスパの低さや不健康なイメージで客離れが続く一方で、宅配サービスのプラットフォームには日本式ファストフードが溢れているにも関わらず、吉野家の人気は衰えていった。
吉野家の凋落は、合興集団に買収された2011年以降に見られるもので、合興集団の売上高に占める吉野家の割合は約80%を維持していた。
しかし、2017年以降、合興集団の純利益は減少傾向にある。2020年までに合興集団は比較的深刻な損失を出しており、現在、香港証券取引所からの上場廃止を検討している。
合興集団の財務報告書によると、2017年に1.67億万元の純利益を記録して以来、合興集団の純利益は減少傾向にあり、2019年には純利益が1.4億万元にまで落ち込み、2020年には新型コロナウイルスの流行に見舞われ、合興集団は8,190万元の損失を出した。同時に、合興集団の純利益率も大きく低下しており、2017年には7.54%に戻っていたが、2020年にはマイナス5.03%になっている。現在、吉野家の売上高は5年前と比べかなり落ちている。
吉野家は、日本の親会社が直接運営している南部市場でも店舗閉鎖の危機に直面している。吉野家は、国内外で150店舗、中国を含む海外で50店舗を閉鎖することを発表した。
追い込まれた吉野家は、自らを変革するための一連の試みに乗り出した。セルフサービスのミニ鍋の導入、出来合いの料理の販売、ソーシャルIPの構築などだが、今のところ、特に効果を上げていない。
現在のファストフード市場では「和府捞面」や「打鼓米线」などのチェーンが人気のようだ。様々なブランドのファストフードチェーンが登場しているが、吉野家は牛肉と白米というカテゴリーと限定された客層がターゲットとなっており、八方塞がりのジレンマに陥っている。

複雑な人口構成と地理的環境を持つ中国では、嗜好が地域によって大きく異なるため、白米ファストフードというカテゴリーの地域性が、レストランの発展をある程度制限していた。
宅配デリバリーのプラットフォームが充実してきたこともあり、中国のファストフード業界はボーナスステージを迎えた。「螺狮粉」「扬州炒饭」「云南米线」などの地元のファストフードが全国に広がり、何百万人もの家庭に届いている。新商品の展開を速め、顧客ファースト路線にしない限り、吉野家の凋落と同じ事態になるだけだ。
おわり
日本では終わりなき牛丼戦争を繰り広げている「吉野家」「松屋」そして「すき家」の牛丼御三家だが、中国で勝ち続けているのは「すき家」だ。
「吉野家」は本記事の通り、衰退の一途を辿っており、「松屋」はというと、一度は牛丼屋として中国進出したものの、地元客の要望に沿った品揃えと価格展開ができず、10年ほど前からトンカツ屋「松乃家」に鞍替えして商売を続けている有様だ。
ではなぜ「すき家」だけが勝者になれたのだろうか。ずばり言うと圧倒的な「こだわりの無さ」と「ドローカル」の運営手法が決め手となった。
まず「こだわりの無さ」だが、当然、白米や牛肉の質にはこだわりつつも、飽きやすい消費者を繋ぎ止めるために、好かれそうなものは何でもメニューに加える、ずば抜けた柔軟さを持っている。
チーズやキムチは定番だが、これ以外にも、牛丼にトマトソースや麻婆豆腐をぶっかけてみたり、日式ラーメンやたこ焼きがメニューに加わったり、夏には季節限定の鰻牛丼を出してみたりと、当たりそうなことは何でもやるのが「すき家」だ。

次に「ドローカル」だが、すき家の出店エリアが実に絶妙なのである。まず目抜き通りやオシャレなショッピングモール内には出店せず、「えっこんなところに!?」と思わず言ってしまいそうな裏路地や三流モールに店を構えているのだ。であるから「すき家」の並びのお店はファミリー経営の牛肉麺屋だったりする。
当然、賃料をかなり低く抑えることができ、さらに宅配デリバリー時代の現在においては、その立地の悪さも宅配でカバーできるという考えだと思うが、見事に成功している。
中国進出してきた日系の外食サービス企業をたくさん見てきたが、「すき家」ほど地域に根ざし、たくましく、そして柔軟に変化しながら、着実に事業を伸ばしている企業を私は他に知らない。