先月の記事「プラダとローカル生鮮市場の異色コラボ」の中でも、芸能人やアーティスト(人間)を活用したプロモーションの危険性について解説しましたが、憂慮していた問題がまた起きてしまいました。
先日、著名ピアニストの李雲迪(リー・ユンディ)氏が買春容疑で北京で行政拘留処分されたニュースが流れ、リー氏と提携している複数のブランドが早急な対応に追われました。

リー氏と提携していたブランドには、長城汽車、京東、東風日産、ロレックス、カサティ(ハイアール傘下ブランド)、トムフォードなど国内外の企業が10社ほど含まれていたようです。
語弊を恐れずに言うと、リー氏の場合、まず独身であり、しかも大金を出してプロの方に相手をしてもらっているわけで、男性アイドルのクリス・ウーが素人相手に強姦事件を起こした件と比べると、今回のニュースはいささか大袈裟で、同情すらしたくなりますが、ただリー氏はブランドの代言人(イメージキャラクター)をしており、社会的に公人である以上、これも仕方がないのかもしれません。
今回の買春事件を踏まえ、やはりプラダの「野菜とのコラボ」は正しかったな、と改めて再認識したわけですが、実はそんなプラダも今、非常に大きなジレンマに陥っています。
というのも、西側諸国が様々な難癖をつけて2022年北京冬季オリンピックをボイコットしようと画策している中、プラダは北京冬季オリンピックの公式スポンサーとして、オリンピックに先駆けて北京のショッピングモール「SKPアトリウム」で「Prada On Ice Collection」を発表するなど、中国国内で精力的にプロモーション活動を行なっており、中国と西側諸国の間で難しい綱渡りが要求されているからです。
プラダはグローカル(グローバル+ローカル)を前面に出したマーケティング戦略を活用し、中国国内の消費者から共感を得ると共に、西側の消費者を失望させないようバランスを取っており、今のところうまく行っているように見えます。
しかしながら、世界の潮流が刻一刻と変化する今日において、プラダのバランサーとしてのグローカル戦略がいつまで通用するかは、誰にもわからないのが実情ではないでしょうか。
第二のドルチェ&ガッバーナにだけはならないよう祈る他ありません。
2019年、上海で開催されるファッションショーのためにドルチェ&ガッバーナが制作した動画広告が中国の文化や女性を侮辱した内容であったため大炎上し、中国からの事業撤退を余儀なくされた。
いずれにしても、プラダのような高級ブランドやオリンピックにはまったく興味がない私には関係のないことで、今日もこの記事を公開したら、先日買ったばかりのニューバランスの新しいジョギングシューズを履いて、秋晴れの上海の街を走ろうと思います。