中国メディア「発現香港」から「香港で中国の国産車を見かけないのはなぜですか? 理由はこれです!」を紹介します。
香港が中国に返還されて早20年余り。一国二制度という環境の下、経済、政治、文化の面で大きな変化があったが、この20年を振り返ってみると、中国自動車メーカーの香港市場参入がうまくいかなかったことがわかる。
クルマづくりという観点から見ると、中国メーカーの自動車は外観デザイン、技術構成、組み立て技術のどれをとっても、大きなレベルアップを遂げている。自動車製造のレベルは、基本的に韓国の現代・起亜のレベルには達しており、業界トップである日系やドイツ系にあと一歩というところまで来ていると豪語する人もいるくらいだ。
中国メーカーの車はすでにかなり良い所まで来ているのに、なぜ香港ではさほど普及していないのか。それは次の5つの理由に集約される。

香港と中国大陸の交通ルールの違い
まず運転習慣の問題がある。歴史的な経緯から、現在の香港の交通規則は、右ハンドル(中国は左ハンドル)、左側通行(中国は右側通行)、ヨーロッパの排ガス規制を採用など、本土とは逆の英国式の習慣をいまだに引き継いでいるため、運転習慣や規格に違いが生じている。

香港の排ガス規制
排ガス規制については、香港ではより一般的な国際的な欧州の排ガス規制が採用されている一方、中国本土では国内の排ガス規制が採用されている。国内規格は欧州規格から多くを引用しているが、実際にはまだ若干の違いがある。
また、香港で使われているガソリンの多くは輸入品であるため、品質は中国本土のものよりも良い。もちろんペトロチャイナやシノペックも利用可能である。しかし、大陸で生産された自動車は「地溝油(下水油)」のような著しく品質が悪いオイルにも適応する必要があり、香港で売る場合は、エンジンを再チューニングする必要がある。

香港人の消費意識の違い
香港は人口が多い割に面積が狭いため、コンパクトなサイズで室内空間の広い日本車が選ばれやすい。
また、香港は一般的に車が買いやすいものの、維持費が高いため(主に駐車スペースの問題)、非常に便利な公共交通機関と相まって、香港人の購買意欲はあまり高くない。

自動車販売網
香港の自動車市場は、メーカー直営の正規ディーラーが販売から修理までを請け負う本土市場とは大きく異なる。香港では、販売店とメンテナンスショップが別々であり、さらに、1つの自動車メーカーは基本的に1つの代理店ライセンスしか持てないため、両方に対応することは基本的に不可能である。さらに販売網は基本的に独占状態にあり、歴史的な理由から、初期の代理店は海外メーカーからの輸入車を選択しており、中国本土の合弁メーカーについては、選択を再考することはなさそうだ。

中国国内メーカーおよび合弁会社による輸出車は少ない
この根本的な理由は、合弁メーカーの車の輸出が少なく、合弁メーカーの車は、国内のガソリン事情や交通ルールなど国内市場に基づいて生産を行なっていることにある。また、合弁メーカーの国産車を輸出はしているものの、香港市場は何しろとても小さいため、見向きもされていない現状もある。
では最後に、香港人はどのようなクルマに乗るのが好きなのだろうか見てみよう。
トヨタ・アルフォード
中国人の中国国産メーカー車への愛とは異なり、香港の街は「保母車」と呼ばれるトヨタアルファードでで溢れている。アルファードは、発売以来、車業界の主要な賞を席巻し、最初に高級MPV市場を支配した「神車」だ。多くの有名人、政治家や起業家のお気に入りの車となっている。

トヨタ・クラウン
香港のタクシーは基本的に赤いトヨタのクラウンコンフォートで、20年経っても変わらないが、タクシーとして本土で広く使われていた国産普桑(フォルクスワーゲン・サンタナ)はとっくにリタイアしている。

改造車
香港では、ホイール、サスペンション、エアインテークシステムなど、安全性や環境性能に関わらない限り、車両の改造が認められている。ストリートでの改造は、低扁平率タイヤ、スポーツホイール、大型サラウンド、ローシャシーが一般的で、サスペンションも「ワンサイズ・フィット・オール」の中国とは異なり、変更されるのが普通である。
香港では日本車が主流で、トヨタが大きな割合を占めており、タクシーはクラウン(王冠)である。節約を奨励するため、小排気量車の税金は大排気量車より安く、日本車は香港人に高品質で燃費が良いと認識されており、ほとんどの一般市民が最初に選択する車となっている。
日本車以外では、香港にはヨーロッパ車が多く、ミニバスのシュコダ、イギリスのダブルデッカー、ボルボなどもある。
それ以外にも、メルセデス、BMW、ロールスロイスと、さまざまなシリーズのスポーツカーを香港の街角で見かけるが、もちろんそれらは金持ちが買うものである。
香港自体には自動車産業がなく、車はすべて輸入する必要がある。関税はかからないが、輸送コストや原産国の各種税金により、手頃な価格のモデルは、初度登録税を差し引いても中国本土より香港の方が高く売れる。
これに対し、高級車、特に大排気量の高級車は、香港で購入する方がはるかにコストパフォーマンスが高い。こうしたプレミアムモデルの販売価格は関税の影響を大きく受けるため、関税がゼロの香港が有利になる。

例えばポルシェ・マカンは、本土では購入税込みで63.8万元(約1,200万円)だが、香港では初度登録税込みで61.6万元(約1,000万円)と、本土より安く購入できる。しかもこれは2.0Tエンジンだけの話で、3.0リッター以上の排気量のエンジンモデルなら、香港での価格優位性はさらに大きくなる。
例えば、3.5型のトヨタ・アルフォードは、香港では初度登録税込みで62.3万元(約1,100万円)だが、中国本土では購入税込みで82.4万元(約1,550万円)となる。
したがって、香港では手頃な価格の自動車ブランドと高級車ブランドの価格差は比較的小さい。
おわり
日本人にとって香港がお気に入りの旅先の一つだったり、中国本土から香港まで足を伸ばすとなんとなく落ち着く理由の一つは、この日本に近い交通事情かもしれません。
日本と同じ右ハンドルで左側通行、タクシーはトヨタ・クラウン、街中で見かける一般車も日本の自動車が多め。日本人にとって人気の旅行先であるのも納得です。
ところで香港と比較されがちな都市としてシンガポールがありますが、シンガポールの車事情は、香港とはかなり異なります。例えば、香港の輸入車に対する関税が0%であるのに対し、シンガポールでは関税が20%の上に別途登録料が100%、さらに消費税やら輸入コストやらで車両価格に200%ほど上乗せ料金がかかります。このため、普通のカローラの乗り出し価格は1,000万円と言われています。