先日、配車アプリのDIDIでタクシーを呼ぼうとアプリを開いたのだが、通常価格のタクシーだと待ちが1時間以上と表示されたため、車のランク(サービスと値段)を最大までブーストして待つこと20分、やって来たのはトヨタ・アルフォードだった。
少し前に出した記事「車事情が全く異なる中国本土と香港」で、アルフォードが香港スターたちの間で愛用されている人気車種であることを紹介しましたが、実はこのアルフォード、社用車・私用車を問わず、ここ上海でも富裕層の間で、5年ほど前からジワり人気が出てきている。
今回は中国メディア「極果酷玩」から「BYD初の高級車が登場!5mを超えるロングボディと1,000kmの航続距離があの日本車を駆逐する?! 来年発売予定」を紹介します。

中国の家庭のあり方は刻一刻と変化しており、少し前に「3人っ子」政策が開放されたこともあり、大家族のニーズに応えることができるモデルのリリースが自動車メーカーの急務となっている。
一般的に子供の多い家庭では、セダンやSUVよりも快適な乗り心地と広い車内スペースを持つMPVが好まれ、当然ながらファミリーカーとしての選択肢のひとつとなる。
2021年のMPV月間販売台数の動向を見ると、市場が右肩上がりであることがわかる。第4四半期に入り、業界チェーンの供給が改善され、チップ供給が安定してきたこともあり、10月には年間を通して最高の販売台数となる11万4千台を到達している。

そしてこのような市場の環境に後押しされ、複数のメーカーがMPV市場に触手を伸ばしている。
当然、国民的メーカーであるBYDも何やら騒がしい動きを見せている。昨年BYDは、MPVモデルの発売に関する発表を行なったものの、実物モデルは公開されなかった。
そして今年、BYDは中型SUV、大型SUV、そしてMPVの3モデルを発売することを発表し、カモフラージュ柄を纏ったMPVモデルと思われるティザー写真が公開された。

今年4月にはBYDのプレミアムブランドである「DENZA」の発表が予定されていることもあり、現在最終テスト中のこのMPVは、DENZAブランドからリリースされるモデルの可能性も十分にありえる。
ティザー写真では、MPVはカモフラージュ柄で覆われているが、それでもBYDの「DYNASTY」シリーズや「OCEAN」シリーズとは異なるデザインコンセプトで、以前BYDが公開した未発表のMPVモデル「夏」に酷似し、フロント部分はセンターメッシュの新デザインとなっていることが確認できる。
ヘッドライトはまだ最終決定していないようで、交換用ライトのみが使用されている。全長5mを超えると予想される車体は非常に大きく、左右両側での開封が可能なダブルスライドドアが採用されているようだ。

また、地上高が低く抑えられているようで、乗客の楽な乗り降りが考慮されている。これは、BYDのプレミアムブランド準備室長の趙長江氏が以前、明らかにした「地上高は15cmが最適」という言葉と一致している。
全体的にはトヨタのアルフォードに似ており、特にリアの傾斜ラインや大型リアスポイラーは全く同じだ。

インテリアに関する詳細は明らかにされていないが、少し前に公開された情報によると、7人乗りの2+2+3レイアウトで、3列目シートはフラット/ISOFIX対応になると言われている。
動力については、趙長江氏のウェイボーで多くのネットユーザーが提案をしており、趙氏もそれらの意見を採用したことを認めている。MPVは2種類の駆動モデルがあり、ひとつはプラグインハイブリッドモデルで、純電気航続距離は200km、ハイブリッド航続距離は800~1,100km、もうひとつは純電気モデルで、航続距離は500~800kmとなり、急速充電に対応すると予想されている。
上記のスペックがすべて実現されれば、柔軟性と快適性に加え、広い空間、高い性能と迫力ある外観の緑ナンバー(電気自動車や高性能ハイブリッド車のみに配布される車のナンバー)の取得が可能な高級MPVとなるだろう。
価格については、複数メディアの推測によると、50万〜80万人民元(900万円〜1,500万円)と予想されている。
今回の展開は、BYDが50万元を超える高級車セグメントに参入するための戦略の一環に違いない。BYDといえば安価な大衆車ブランドというイメージが強いため、一見とんでもない価格のように思えるが、今年BYDは、プレミアムブランドDENZAの営業ライセンスを正式に取得したばかりで、この機会にプレミアムブランドに勢いをつけたいのかもしれない。同社は独自のプレミアムブランドDENZAの再構築をあきらめていないのだ。
2月15日、趙長江室長はウェイボーで、DENZAの自動車販売とアフターサービスのための会社の営業許可証が正式に発行され、高級ブランドのための一歩を踏み出すと述べた。
2017年、北京メルセデス・ベンツ販売会社はDENZA事業の一部を担っていた。当時、DENZAには独立した販売チャネルがなかったため、ほぼ全ての業務はメルセデス・ベンツ販売会社の下で行われていた。
BYDとダイムラーがDENZAの株式譲渡契約を締結し、BYDが90%、ダイムラーが10%の株式を保有することになったのは、2021年末のことだ。

そして2022年2月14日、腾勢汽車販売服务有限公司(DENZA)が新たに登記された。資本金は5,000万元で新車販売などの事業を行う。注記すべきは、この会社はBYD汽車工業有限公司が100%出資しており、ダイムラーによる出資はなく、DENZAが独立した販売ルートを構築し、ダイムラーと明確に線引きしていることだ。
DENZAブランドは、2022年に中国市場に新型車を投入し、さらなる市場開拓を目指すとしており、4月の北京モーターショーでハイエンドモデルをお披露目する予定だという。
ネットで出回っている今後3年間のBYD新車プランによると、BYDプレミアムブランドは安徽省の合肥工場で生産され、以前話題になったプレミアムブランド1号車のハイエンドSUVもプランに記載されており、今後プレミアムブランドとして発売されることを裏付けている。
話を戻すが、今年は他の複数のメーカーがハイエンドMPV市場に参入するため、BYD初のMPVは激しい競争に直面することになると予想される。
中国のMPV市場はまだ始まったばかりで、BYD初のハイエンドMPVが2023年に正式に発売できれば、研究開発の速さと強さは賞賛に値するが、しかし2022年には、他のメーカーからもハイエンドMPVモデルがいくつもリリースされるため競合が激化し、BYD初のハイエンドMPVにかなりの影響を与えるのは必至だろう。
まず今年4月に北京で開催されるオートショーで「WEY」はフラッグシップMPVモデルを公開する。外観を見る限りファミリーユースなスタイルではあるが、ビジネス向けかどうかは不明だ。

また、国産車ブランドの「紅旗」が今年初めてMPVを発売するが、これまで公開された紅旗のMPVのティザー写真を見る限り、紅旗らしい力強い外観で、想定されるターゲットはビジネス・エグゼクティブで、ファミリーにはあまり適さないことが分かっている。

さらに「Zeekr」初のMPVのティザー写真も公開された。スマートテクノロジーを最大の特長とし、700km以上の純電気航続距離を持つことが予測されている。

最後に「一汽トヨタ」から今年発売されるフラッグシップSUVモデル「GRANVIA」は、新しい海外向けMPVモデルであり、ボディサイズは5300*1970*1990mmと非常に圧倒的なフォルムを持っている。

このように今後ハイエンドMPV市場に参入してくるメーカーがさらに増えることが予想されるが、はたしてBYD初のMPVモデルはうまくいくのだろうか?
多くのネットユーザーは、BYDの車に50万元も出せない、あまりにも高すぎる、といった辛辣な声が多く、消費者の間では、BYDは安価な車というブランドイメージが深く根ざしているようだ。
事実、BYD初のMPVモデルの価格はトヨタのアルフォードと同等であり、多くのユーザーはトヨタを買ったほうがいいと考えている。
BYDのプレミアムブランドDENZA自体は、創業から11年が経過しているものの、これまでに発売されたのは1モデルのみで、その後発売された「DENZA400」「DENZA500」は、初代モデルのアップグレードにとどまり、新モデルが登場することはなく、長い年月の中でDENZAブランドは色あせてしまった。
しかし、世界の新エネルギー分野におけるBYDの現在の地位は誰の目にも明らかであり、今回のダイムラーからのDENZAブランドの買い戻しは間違いなく朗報であるため、まもなく発表されるBYDの新型MPVが皆を驚かせるものになることを期待したいものである。
おわり