中国メディア「界面新聞」から「爆増するマックカフェ(McCafe)来年にはさらに1,000店舗を開店予定」を紹介します。
9月1日、マックカフェのメニューから「カフェラテ」が削除され、代わりに「ミルクラテ」が追加された。今後、マックカフェではこのミルクラテが主力商品となるそうだ。
今回の新商品の発売に合わせて、マックカフェは今後の店舗のバージョンアップや新店舗の展開に関する情報も初めて公表した。
現在中国国内に約800店舗あるマックカフェは、今後2,500店舗近くまで拡大し、それに合わせてバリスタも1万人以上に増える予定だ。上海、北京、広州、深圳などの一級都市にあるマクドナルド店舗では、すでにバージョンアップしたマックカフェ・ブランドが適用されている。2023年には約1,000店舗の新規出店を見込んでおり、その多くは三級都市に出店する。
2020年、マックカフェは中国本土のコーヒー市場でのプレゼンスを加速させるため、今後3年間で25億元(約500億円)を投資すると発表していた。
実は多くの中国の消費者にとって、マックカフェは特に目新しいものではない。マクドナルドの多くの店舗では、作りたてのコーヒーを提供するマックカフェ・カウンターが、マック・カウンターとは別に設置されている。この店舗形式は、オーストラリア市場のマクドナルドで最初に導入され、2009年に同様の形式でマックカフェが中国本土の上海に導入された。
中国コーヒー市場におけるブランドのパイや競争力については、また別の機会に話すとするが、マックカフェには独自の強みがある。
マックカフェはマクドナルドの店舗システムに依存し、店内の改装で迅速に市場を拡大することができる。また、外食産業の超大手であるマクドナルドは、サプライチェーンにおいて極めて強い力を持っており、マックカフェはこのサプライチェーンの優位性を生かして、コストを抑えることができる。現在、マックカフェの「ミルクラテ」の販売価格は20元程で、よく購入特典や割引クーポンを配布している。
さらに、マックカフェは、マクドナルドのオンラインシステムや会員制システムを運用レベルで共有し、運用レベルで何らかの支援を受けることで、大規模なネットワークカバレッジを形成することもできます。上海琲越投資管理有限公司の王振東会長は「界面新聞」に対し、「また一つ大きなブランドが加わることで、(コーヒー豆の輸入などでの)国際貿易市場における発言力が一段と強くなるだろう」と語った。
しかし良いことばかりとも言えない。
マックカフェはマクドナルドのシステムをベースにしているため、課題の1つにブランド認知があり、完全に別ブランドとして運営した方が良いのではという意見もある。
実際マックカフェは、消費者に「マクドナルドのコーヒー」ではなく、別ブランドとしてイメージ構築してもらいたいと考えている。これは、コーヒーブランドの文化的特質を強化する能力に大きな影響を与える。 マクドナルド店内では手軽にマックカフェに足を運ぶことができるが、欧米のファストフードとコーヒー文化は区別されており、マックカフェ・ブランドを単体で強化することは、コーヒー市場においてある程度競争力を持つことになる。

「ミルクラテ」は、マックカフェの高級路線商品の強化が主な目的
実はこれ、マクドナルドの「ハンバーガー」の高級路線商品を「コーヒー」にしたモデルの延長線上にある。例えば、ビーフバーガーのジャンルに「アンガスビーフバーガー」、チキンバーガーのジャンルに「グリルドチキンバーガー」があるようにだ。これらは消費者の記憶に強く残っており、ミルクラテも同様の効果を狙っているというわけだ。
ミルクラテは中国人消費者にもっと受け入れてもらえると考えられている
美団が発表した「中国コーヒービジネス報告書2022年」では、ミルクコーヒーは中国のコーヒー市場において広く受け入れられる商品であり、2021年の美団の店頭カフェの売上全体の54%を占めた。コーヒーマシンのスチームワンドで泡だてられたミルクの甘みが、濃縮コーヒーの苦味を中和し、比較的バランスのとれた味が体験できるため、中国の消費者にも受け入れられやすい。
Manner Coffee(マナーコーヒー)のミルクラテ・シリーズは、オリジナルのラテ商品の抽出方法とミルクとカフェの比率を変更し、珈琲粉の量を多くしてコーヒーの前段と中段のエッセンスを抽出することで風味を際立たせ、さらにミルクの消費量を約30%増やすことでコクのある味わいを実現している。
マナーコーヒーは開発当初、「界面新聞」のインタビューで「お客様がより濃厚なラテコーヒーを好むことがわかったので、より質感の良いミルクを選ぶようにコストをアップした」と明かし、当時の市場で大好評となった。またコンビニ大手の全家便利店(ファミリーマート)が自社のコーヒー商品を開発するために市場調査を行ったところ、朝食にラテを選ぶ人が多いことも判明した。
従ってマックカフェで「ミルクラテ」を全面推ししたのも、ある程度は中国の消費者の味の好みに合わせたものということだ。同社によると、マックカフェは若い層だけでなく、ファミリー層や中所得層の顧客の割合も多く、ミルクラテはこの種の顧客に適しているという。ラテはコーヒーをあまり受け付けないこのような顧客層にとって、受け入れのハードルがかなり低くなるからだ。
マックカフェのは今後、「ミルクラテ」をベースに新商品の開発や改良に取り組んでいくそうだ。まずは標準的なミルク、次にオートミルク、さらに濃厚牛乳やココナッツミルクなども加え、将来的には様々な乳製品をコーヒーとブレンドした飲料の販売も行う予定だそうだ。現在のコーヒー市場のトレンドも同様で、超濃厚ミルクから水牛ミルクまで、オートミルク以外にもコーヒーメニューの選択肢の中に革新的なアイデアが次々と登場している。
今回のマックカフェの出店計画がうまくいけば、かなりの店舗数を有することになる。年間1,000店舗という出店ペースは、実は他のコーヒーチェーンではなかなか実現できないことだからだ。
現在、中国のコーヒー市場のチェーン率は高くなく、美団が発表した資料によると、コーヒーチェーン率は25%ほどだそうだ。また、コーヒーチェーン各社は、市場攻略のために一斉に出店を急いでいる。Tim Hortons(ティムホートンズ)は、2026年末までに少なくとも2,750店を出店したいと公表しているし、マナーコーヒーは2022年2月に400店を超え、1週間で10都市で200店以上を展開した。
各社の決算報告書によると、2022年第2四半期時点で、スターバックスは5,761店舗、ラッキン珈琲は4,968店舗の直営店を有している。一方マックカフェは独自の特性を生かし、数千店舗に急増している。
これから急速に出店を進める三級都市など、より早く市場に浸透させることができるスケールメリットと、独自のブランド効果を活かして、先ほど述べた家庭用消費者など、もともとコーヒーを飲まなかった消費者層をより多く取り込むことができかもしれない。
しかし規模の優位性があるからといって、競争上の難易度が低くなるわけではない
マックカフェが位置する20元の価格帯は、中国市場においてコーヒーの最も競争が激しいセクションである。中信証券の調査部門も「20〜30元の価格帯は全体の45〜50%を占め、最も競争が激しいセクションだろう」と見ている。ミルクラテ発売後は、そのスケールメリットを活かして、いかに消費者に素早く浸透させ、日常的な消費慣性を確立するかが、今後のマックカフェ成功のカギを握っている。
おわり