「深燃財経」に美容整形にまつわる記事がアップされていました。中国の美容整形は超富裕層や一部の業界人の間では2000年ごろから流行っていたそうですが、2010年以降に韓国人美容整形外科医がこぞって中国に出稼ぎにやってきたことで、安価な美容整形(とプチ整形)が若い女性の間で一気に浸透していきました。現在、中国の美容整形市場はすでに世界一になっていると思います。

「深燃財経」の記事はこんな感じです。
今では、水光注射(ヒアルロン酸注射)を打ったり、サーマクール(高周波治療)を受けたり、二重まぶた手術をしていない人は時代遅れかもしれません。自分の外見をより良くするためにお金をかけることが当たり前になってきています。
美容医療は化粧では得ることができない一つも二つも上の理想の顔を実現することができ、しかも簡単なケアですぐに回復できる。この大きなメリットと手軽さにより、若い人たちの心をつかんでいます。あるレポートによると、2019年、中国の美容医療の消費者の平均年齢は24.5歳です。
旺盛な需要を受け、市場は拡大するばかりだが同時に業界に多くの問題も生み出しています。「上海アイリサーチコンサルティング」によると、2019年、国内で美容医療行為を提供する機関は約1万3千軒あるが、正式なライセンスを持った美容医療クリニックは業界全体のわずか14%に過ぎない。また新氧(SOYOUNG)提供のデータでは、国内の美容医療行為が可能な正規のクリニックは9500軒しかなく、無免許のクリニックが6000軒あったという。
つまり、美容医療市場には正規非正規のクリニックやサロンが多数混在しており、正確な数や状態は誰も把握していないということだ。
医師やクリニックに正規ライセンスや十分な経験や環境が備わっていないことが原因で、医療事故が頻繁に発生しています。美しさを過度に追求するあまり、悪い結末を招く事例も珍しくありません。
今回は美容医療に魅せられた3人の女性に話を聞き、教訓を語ってもらいました。
アンチエイジングに金をかけまくるアラフォー女
以下莎莎(シャシャ)さん談(38歳、インターネット企業勤務)
今年の春節明けに、私の友人の知人が「サーマクール」の施術を受け、効果がとても良かったため、友人も同じクリニックの同じ医師のところで「サーマクール」を受けました。彼女は午前中に行ったので、私は正午に微信(ウィーチャット)でメッセージを送り、結果を聞いてみました。もし結果が良かった場合は私もすぐにそのクリニックに直行しようと思っていました。
しかし、彼女からのメッセージははなく、夕方になって電話がかかってきました。「術後から体調が悪くなり、微熱が続いてさっき退院したばかり」とのことでした。その間、顔がずっと火照てり、夜は顔を触るのが怖くて横になって寝られなかったそうです。2ヶ月後、彼女の顔はまだ浮腫んでいて、顔にはシワが残り、薬を塗ると膿が出てきます。
この施術の効果には個人差があるのかもしれません。というのも、私の友人の知人は同じ施術を受けたのですが、結果は素晴らしいものでした。一方、私の友人は4ヶ月が経っても顔が完全には戻っていません。
私は元々こういった医療行為に対し恐怖心がありましたが、今回の友人の残念な結果により、注射やメスを使う施術は絶対にやらないと心に誓いました。とはいえ「エステやビューティーケア」の部類の施術には、かなりお金を使ってきました。
2019年5月、ヨガレッスンの後、自宅近くで行われた少しハイレベルな女子会の関係で、体のケアのための簡単な体験をすることになりました。サロンに着くとさっそくスタッフが口説いてきました。
「女性は35歳になると、見た目はまだ若いけれど、体の機能は下り坂に来ています。老化はまず卵巣から始まるので、卵巣メンテナンスの施術があるので、体験してみませんか?」と。
私はこれを聞いて、すぐに数百元を払って施術を体験してみることにしました。まずエッセンシャルオイルを使ったマッサージを行い、次に鍼治療を行い、さらに卵巣の経絡をデトックスするために塩の入った袋で温湿布をしました。施術が終わるとスタッフは「今キャンペーン中で23,800元が19,800元になるし、それなら施術が10回受けられますよ。」とカードの購入を勧めてきた。最初の体験が良かったので、カードを作ることに同意しましたが、ここから私は「帰らざる道」に踏み出したのです。
支払いを済ませ、私は「卵巣の状態が整っていれば、顔のシミはなくなりますか?」と聞いてみました。サロンはすぐさま新たな売り込みを始めた。「お姉さん、今ちょうどドイツから輸入したレーザートーニング機材を使ったシミ取りの施術があります。1回99元で体験できますが、体験してみませんか?」その後、再び99元を支払い、体験だけするつもりでした。
レーザートーニングのシミ取りは、まず洗顔をした後、エッセンシャルオイルを塗ってマッサージし、次にシミのある部分に鍼を打ち、最後に赤と青の光を当てる。体験後、スタッフはこの施術のカード購入を勧めはじめた。値段は20回分で9,999元。次に、肌の引き締めプログラムも体験しました。機械を使って体のさまざまな部分をマッサージし、体験後に15回分の31,800元をカードにチャージしました。
次々とアイテムを追加して、結局1日で6万元近くをこのサロンで使いました。
毎週土曜日の午後は、基本的にそのようにしてサロンで過ごしていました。そして、売り込みがある度に、目の充血を取るためのアイトリートメント、角質除去、子宮の温めなど、新しいアイテムをどんどん追加していきました。多いときには5、6人のスタッフが取り囲んでいろいろな施術について教えてくれ、最大で18万元までチャージされたカードを持っていました。しかし、2020年以降は仕事の忙しさなどでサロンに出向く回数が減り、今でもカードには15万元ほどが残っています。
女性は自分の体をもっと労り、愛する方法を知らなければならないと思います。短期間のトリートメントですぐ改善が見られるとは思っていません。私は、注射やメスを使った医療行為は絶対に受けませんが、時間ができたら、まずはカードに残っている残金の15万元を消費しようと思っています。

10年前に闇医療施設で二重埋没手術を体験
乔乔(チャオチャオ)さん談(30歳、オンライン店舗管理者)
子供の頃から二重まぶたになりたい思っていたので、大学に進学した後はいつもアイプチシールを貼っていました。アイプチを使ったことがある人ならわかると思いますが、貼るのが面倒なだけでなく、まぶたから剥がれてしまうことが多く、人に見られてとても恥ずかしい思いをしたことがありました。そこで、二重まぶたにするための研究を始めたのですが、最初にいくつかの病院や美容機関に問い合わせたところ、費用は数千元でした。学生の私にはそんな大金はとても払えないと諦めていました。
そんな時、学校の寮の女の子がまぶたを整形して結果が良さそうだったので、その子が「スタジオ」と呼んでいた「非正規のクリニック」を紹介してもらいました。スタジオは住宅の一角にあり、壁には美容・スキンケア用品が並び、韓国に留学した医師の証明書も貼られているが、適切な手術室や設備はありませんでした。
まずは相談だけするつもりだったのですが、まさかの女医の登場で焦ってしまいました。女医が勧める二重埋没法は、二重切開法のような皮膚を切開する方法ではなく、瞼の皮膚に糸を通して固定するだけの安全な施術という説明を受け、交渉の末、女医が「二重埋没法なら1800元でいい」と言ってくれたので、受けることにしました。
まだ疑問が残る私を小部屋に連れて行き、ベッドに寝かせると、女医が目に麻痺の目薬を差し、針で服を縫うようにまぶたを上下に縫うのを感じながら、「回復にはどれくらいかかるのか」「失敗しないのか」と質問しました。女医が「いいよ、終わったよ」と言うまで、わずか10分くらいしかなかったような気がします。
私は軽いショックを受けました。何年も前から思い悩んでいた問題がこんな短時間で終わるのか?という感想でした。終わった後は目が少し腫れましたが、一人で歩いたりバスに乗ったりできるようになったので、ルームメイトと一緒に学校に戻りました。今考えると、やはりちょっと怖かったですね。ただ女の子が美貌を得ようとする気持ちを抑制するのは本当に難しいと思います。私は普段から痛みや面倒な処置を恐れているのですが、その時は軽い気持ちで、医者とは呼べないような人に二重手術を許してしまいました。
後で知ったのですが、この小さなスタジオのオーナーは、学校の近くにあるマーケティング会社に代理営業を委託していて、その会社が二重まぶたにしたい学生を探していたということでした。女医は事前に予約を取ってから、週末に手術道具の入った箱を持って学校に行き、十数名の生徒に二重まぶたの施術を行うこともあり、その光景は圧巻の一言でした。
この手術による大きな事故はありませんでしたが、わずか3年ほどで二重まぶたが以前の一重まぶたの状態に戻ってしまいました。仕方がないので、北京の正式な医療機関に行って修復をしてもらいましたが、今度は1万元以上かかりました。
二重まぶたの術後、私が整形したことが誰にもバレず、親戚や同級生からは「最近変わったね、どんどん綺麗になっていく」と言われ、嬉しさで天にも昇る気持ちでした。
私はプチ整形程度の小さな手術には賛成ですが、鼻の整形やアゴの骨切り、豊胸手術のような命に関わるものには大きな抵抗があります。ほとんどの女の子は、自分の中で満足できない部分を持っているはずなので、適切な微調整をして、誰にもバレずにに美しくなることはとても素晴らしいことだと思います。ただ非正規のクリニックやスタジオには行かない方が無難でしょう。

美容整形はギャンブルなのではないか
丸子(ワンツ)さん(25歳、美容整形カウンセラー)
私は新卒の頃から美容整形カウンセラーになりたかったのですが、この業界に入ってみて、落とし穴がたくさんあることに気づきました。
リクルートという名目で、美容整形カウンセラーになりたい新人にお金を払わせて整形を受けさせる悪徳美容整形クリニックにも出会ったことがあります。面接時に回りくどい質問をして「整形をしてもいい」と思う人を引き留める、など採用や教育に巧妙に織り込みます。また、入社前に1週間のトレーニングを行いますが、その際に上司に呼ばれ、自分の顔のどの部分が気に入らないのかを尋ねられ、「今ならフェイスリフトができますよ」とスタッフにも営業をかけてきます。またある時は、新人にビッグピクチャーを描かせたりもします。「この整形手術で顔を修正したら、美人になれるし、自分の経験を生かして、お客さんに説得力を持たせことができる。いずれはチーフカウンセラーにもなれるよ」と。
提示された価格は市場価格よりも高く、手元にお金がない場合は、分割払いをするように勧められ、お金はいずれすぐに取り戻すことができるから心配ない、と言ってのけます。さらには、バーやKTVに行かせて知り合いを増やし、整形手術を紹介することで手数料を稼ぐなどの方法も教えられます。このようなことは普通のクリニックでは行われないことです。
このような美容整形クリニックの人たちは、あなたが美容整形の施術に適しているかどうかは全く気にしていません。興味があるのは、あなたにお金を使わせることだけです。整形の経緯、施術を行う医師の専門的なスキルと経験は必ずしも高いわけではなく、場合によっては患者に大きな損害をもたらす可能性もあります。
私の友人は、鼻先形成術を5回やってうまくいかず絶望していました。その後、友人は誰かから「どこどこのクリニックがいいみたい」という情報を聞きつけ、クリニックの資格の有無を確認せずに行ってみたところ、問診や待ち時間中の対応でかなり良い感じを受けたので、その時に先払いで半額価格の6万元を支払ったそうです。しかし、手術台に向かおうとしたとき、医師が来ていないことに気付き、看護婦に尋ねたところ「待っていてください。あなたの手術の材料がまだ到着していません。」と言われたそうです。
彼女はその時点でクリニックのプロ意識の低さを感じましたが、虎の威を借るつもりで手術を受けてみました。術後しばらくは出来ばえに満足していたのですが、しばらくして、ふと鼻の穴の真ん中で何かがすり減っているような気がして、触ってみるとプロテーゼが抜けていたので、担当の医師に聞いてみようとメッセージを送りました。医師から帰って来た返事は「クリニックは閉鎖されました」だった。彼女は完全に打ちのめされ、精神的におかしくなってしまいました。
この業界に長くいると、美容整形はギャンブルなのではないかと思うようになりました。
どうしても美容整形をしたいのであれば、ライセンスを持った正規のクリニックを探すのが一番です。営業をかけてきた人を信用してはいけません。また、手軽なアンチエイジングの施術の中には、誰にでも効果があるわけではないものもあります。多くの美容医療カウンセラーは「マーケティング心理学」を巧みに使って消費者にお金を払わせるように煽ります。その時は思いつきで払うのではなく、より多くのクリニックと面談をしてから判断してください。それと当然ですが、美容医療カウンセラーだけに相談するだけではなく、医師と直接コミュニケーションを取るようにしてください。
最初の段階である程度の知識があれば、後になって落とし穴に落ちることを回避できるでしょう。

おわり
この記事を読んでいて、ある美容整形業界の大御所が私にこそっと言ったセリフを思い出しました。テレビCMでもよく見かける「◯南美○クリニック」を「美容医療業界のマクドナルド」と呼び、「本当にお金がある人はマクドナルドには行かないでしょう」と。
確かにファストフードの「早い、安い、旨い」は忙しい時には便利でいいですが、美容整形クリニックの「早い、安い、上手い」は少し後が怖いですね。