クーリエジャパンに「中国で活躍する映像作家の竹内亮氏が心配」という内容の記事が、少し過激なタイトルと共に掲載されていました。
竹内亮氏は中国在住の映像作家で、2016年頃からビリビリで動画をアップするようになり、2017年にはYouTubeチャンネルも開設、日本語と中国語で動画を定期配信しています。
初期の頃の作品は、自身が住む南京の市民にインタビューしたり、中国在住の変わった日本人を動画で紹介したりと、手作り感があり親近感がわく動画が多かったと思います。
中国在住でドキュメンタリー映像を撮る竹内氏はとても新鮮だった
当時、ビリビリ動画で活動している中国在住の日本人UP主は、私が知る限りわずか5名ほど。内容も10〜20代前半向けのものが多く、30代後半(当時)の竹内亮氏が制作するドキュメンタリー動画はある意味とても新鮮でした。

そんな竹内涼氏、4年ほど前から中国在住の日本人の間で有名になっていましたが、1年ほど前から中国人からも「竹内涼という日本人知ってるか?」と逆に聞かれることが数回ありました。中国の主要メディアでも紹介されるようになったからですね。
クーリエライターの田中淳氏の記事は、竹内監督のドキュメンタリー動画は、情緒豊かでユーモアに溢れ、観る者の心を揺さぶる魅力があるが、今では中国政府お抱えの御用ジャーナリストに成り下がっているようで非常に危うい、と警告を発している内容でした。
私もつい最近、竹内涼氏が中国系メディア「鳳凰新媒体(フェニックス)」でのインタビューで、「日本下げ」的な発言をしている動画をたまたま見かけ、少し残念だなと思っていたところでした。
田中淳氏は記事の最後で、過去に微博(ウェイボー)や日中のメディアでコラムリストとして活躍していた「カリスマ留学生」「中国で一番有名な日本人」ともてはやされた加藤喜一さんの名前を出し、なぜ現在の竹内氏が危ういかを例を挙げ、文章を締め括っています。
文春砲を食らい姿を消した加藤嘉一氏
初めて加藤嘉一氏の名前を見かけたのは、2009年ごろ。微博で人気になっている北京大学院の日本人留学生という設定だったと思います。すでに50万人ほどのフォロワーがいました。(2021年5月時点で144万人)

高身長でサラサラヘア、キリッとした目のさわやか系、竹内氏とは正反対ですが、当時は、そんな彼が微博で発する一語一句に中国人フォロワーから大量の「いいね」とコメントがついていました。
私は、北京大学の大学院生とはいえ、たかが一日本人留学生がやたらもてはやされているのに違和感しかなかったのですが、「東大法学部への合格を蹴って中国に留学しに来た」(後で嘘とバレる)と公言していたので、その辺りが、中国人の自尊心を掻き立てていたのもあるかもしれません。
そんな加藤氏、2012年に週刊文春に様々な嘘をすっぱ抜かれ、日中の大手メディアから完全に姿を消す結末となりました。
日本の大手メディアが発信する中国情報は、確かにネガティブな印象を与えるものが多いといえます。そんな中、竹内氏のような現地在住者による制作活動は素晴らしいと思いますし、また情報源としても貴重であるのは確かです。ですが安易に日中を比較して、どちらが良い、どちらが悪い、と持っていくのは危険だと思います。
トランプ前大統領以降、メディアコントロールや世界トップレベルの闇がネットで少しずつ明るみになりつつある今日、ジャーナリズムとはなんぞや、と考える必要がある時期に来ているようです。