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中国語ラップってどうなの?まずは「中国有嘻哈」を知っておこう。

中国語ラップ

TBS NEWSが「中国軍がラップ動画公開 台湾などけん制か」というタイトルのニュースをアップしていました。センシティブな政治的内容については、ここでは語りませんが、中国軍がラップを使ってアピールする背景について考えてみたいと思います。

中国でのラップの社会的地位を押し上げたきっかけとなった番組が、2017年夏に放送されました。番組名は「中国有嘻哈」英語名は「The Rap of China」。放送時は大きな社会現象となり、TikTokをはじめ、様々なSNSで若者たちが中国語ラップを披露していました。

この「中国有嘻哈」は、中国国内でマイナー活動を続ける若手ラッパー同士をバトルさせて勝ち負けを決める、いわゆるオーディションスタイルの番組です。審査員は以下の4名(2名と1組)。

実力派の台湾出身ラッパー「熱狗X張震嶽」

これは「差不多先生」という有名な热狗の代表的な曲

この曲を聴く限り、中国語では韻を踏む箇所を後ろに持ってくるのがクールなようです。韻を踏むとは「インテル入ってる」のように同じ韻を連続的に使ってリズムを取ること。英語だと「Intel Inside」のように前に韻を持ってくることが多い様です。

同じく台湾出身の「潘瑋柏」

潘瑋柏といえば「快乐崇拜」、カラオケで歌えたら一躍人気者に

2000年代初頭にデビューした潘玮柏(パンウェイボ)は、まさに明星(スター)そのもの。代表曲は「快乐崇拜」ですがこれ以外の曲は大してヒットしませんでした。

アイドルラッパーの「吴亦凡」

実力はイマイチですがアイドルラッパーとして人気

中国人ですが韓国のアイドル養成所で訓練を受けたアイドルラッパーです。

中国の中国語による中国人のためのラップオーディション番組

番組内では、英語を多用する「アメリカ育ちの中国系アメリカ人」や「中国語が上手なブラックと中国のハーフ」なども出場していましたが、番組の趣旨が中国人による中国語によるラップだったため、明らかに一つ上のレベルを見せているにも関わらず早期に落選したり、審査員の「吴亦凡」が他2人の審査員と比べてラップレベルが低すぎるにも関わらず、メインスポンサーが「吴亦凡」推しだったために、彼のチームが勝ち上がっていくなど、あるあるな番組の演出と進行が随所で見られました。

それゆえに多少冷める部分もあるが、それでも若手ラッパーたちのレベルの高さと豊かな表現力に感心させられることも多く、全体的にはとても楽しめる番組だったと思います。

中国文化を上手く盛り込んでいる四川出身のラッパーたち

興味深いのは、海外のカルチャーの影響を受けやすい中国沿岸部の大都市(上海、北京、深圳など)出身のラッパースタイルと、四川省のラッパースタイルがかなり違うことでした。極端な言い方をすれば、沿岸部大都市のラッパーは本場アメリカのスタイルを引き継いだ形であるのに対し、四川スタイルは、中国の中国語(四川語も多用されるが)による中国人のラップでした。

四川省宜宾市出身のラッパーGAI

なぜ四川出身のラッパーが多いのか

中国の改革開放は深圳や広東などの華南地区から始まり、次いで華東地区や華北地区の沿岸部で経済成長が加速しました。それに対し、中国西部のエリアの開発は後回しとなり、経済発展に完全に出遅れた形となったのです。

低賃金での労働集約型産業による輸出ビジネスが主な収入源となっていたため、港がある沿岸部が有利なのは仕方がないことです。ただ中国西部は、地理的にも深い山々が重なり、交通の便が悪いだけでなく、少数民族の数も多いため統制が取りづらかったなど様々な理由で開発が遅れました。

中央政府は、東部と西部の格差問題を解消しようと2005年ごろから「西部大開発」に着手しますが、すでに国内の東西で大きな経済格差が生まれていたために、成都や重慶の高級マンションに上海人や北京人などの沿岸部の富裕層が投資目的で購入してしまい、地元の人には手が出せないほど価格が高騰しました。

「中国有嘻哈」に出ていた若手の四川ラッパーたちは幼少期から、深圳や上海に暮らす人たちの贅沢な生活と比べ、自分たちの生活水準のあまりの低さに、大きな苛立ちや葛藤を抱いていたのは間違いありません。アメリカの黒人たちが楽器を買うお金がないからと始めたラップミュージック、教養も社会的地位もない黒人がアメリカ社会で認めてもらうには大金をつかむだけだと歌うラップは、四川人にも共感できる部分であり、同時に「苛立ちや葛藤」を表現するための便利なツールだったのでしょう。

中国語ラップの歴史はまだ始まったばかりと言えますが、「中国有嘻哈」の番組を境に、若者の間に一気に浸透しました。「中国有嘻哈」に出演した若手ラッパーたちはSNSで大きな影響力を持っているし、何よりラップは「ティックトック」や「快手」などのショート動画プラットフォームとの相性が良いため、人気コンテンツの一つになっています。

中国軍がアピール動画内でラップを使う理由、少しはわかったのではないでしょうか。

最後にもう一曲、歌詞の韻を踏む部分がわかりやすい

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