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工場勤務を辞めて「美団・饿了吗」の宅配ライダーになる若者(下)

アーラマ

工場勤務を辞めて「美団・饿了吗」の宅配ライダーになる若者(上)」の続きです。

宅配ライダーは日本でいうウーバーイーツの配達員のこと。中国には美団(メイトゥアン)と饿了吗(アーラマ)があり、日本とは比較にならないほどインフラ化している。

工場オーナーたちの新たな課題

宅配ライダーは新人たちのことを何とも思っていないが、工場オーナーたちにとっては悩みの種だ。

製造業の人手不足はかなり深刻な問題となっているようだ。中国メディア「人民日報」の調査によると、中国では最大73%の企業が労働者の採用に困難を感じており、特に熟練工員の不足が課題となっている。人口ボーナスの消滅も理由の1つだが、より大きな理由は、デリバリーや宅急便など、若者に豊富な選択肢を提供する新しい業界の出現である。

深圳でカート製造工場を経営する王鳳(ワンフェン)は、10年前の採用活動の喧騒を鮮明に覚えている。彼は人手を探しに転職市場に足を運ぶ必要すらなかった。彼の故郷の親戚やその子供たちすべてが彼の工場に住み込みで働きに来たからだ。そして今日、彼は人手を探しに転職市場にやってきたが、そこにはもう誰もおらず、中学・高校を卒業した村の若者たちで工場勤務を希望する者はいないことがわかった。

国家統計局が発表した「2020年農民工調査報告書」によると、2008年から2018年までの中国で製造業に従事する出稼ぎ労働者数の年平均成長率はマイナス2.8%だった。かつては製造業の労働力として出稼ぎ労働者が大きな役割を果たしていたが、今の若者たちは一回り上の世代のように組立ラインの労働条件に我慢することができなくなっている。

製造業の社長にとって、たった一人の工員を採用するのも大変なことである。東莞のある工場の責任者であるダニーは「界面新聞」の取材に対し、「どこも人手が足りていない時期には、掲示板に貼られた求人票が30分も経たないうちに他の工場のものに取って変えられ、ポスターに書かれた電話番号さえも頻繁に変更された」と語った。時には仲介業者が手配した「工員募集のプレート持ち」が掲示板の前に立つこともあった。

ダニーは仲介業者と仕事をしてみたが、仲介業者から送られてきた工員たちは責任感のない人が多いことがわかった。「彼らは労働者派遣会社と契約しているため、工場での仕事が良くても悪くても関係ないと思っているでしょう。特に私たちの工場での作業は、ネジを締めるような簡単なものではなく、ある程度のトレーニングが必要ですし、工員が頻繁に入れ替わると、仕事に影響が出てしまいます。」

機械化や自動化の技術は工員確保の圧力を軽減することができるが、一般的な工員でも対応できる仕事は、最も低い敷居のものでしかない。現在、ダニーの工場では、40%の人員にギャップがあるそうだ。

ダニーは工員を確保するためにさまざまな工夫をしている。「多くの工場では、7日間の法定休日で1、2日の休日しか与えていないが、私たちは最低でも4日か5日の休日があります。私たちのような海外輸出向け製造業者もそうですが、こんなに休ませたら会社が潰れてしまう、と言われますが、小さな工場ではそれも仕方ありません。」とダニーは言う。

ダニーの工場の人事部長の女性は、10年以上前に湖南省の大型機械製造工場で働いていたときの光景を思い出した。当時、上司は容赦なく工員を怒鳴り、厳しい言葉を浴びせていたが、今ではそれもできない。あらゆる面で人間性の重視が求められる。小さい会議では、従業員の意見や感想を聞いて会社に提案する必要があるし、褒めるべき部分は褒め、報酬を出すべき時は十分に出す必要がある。工員の理解を深めるために、彼女自身が月の半分は組立ラインに立って働いている。

工場のオーナーたちは妥協するしか方法がない。珠江デルタ地域にある金型工場で人事を担当している石マネージャーは「界面新聞」の取材に対し、労働者の離職問題に対してソフト面での改修を行っていることを明かした。「工員が環境が悪いと言えば、マネージャーが率先してトイレを磨き、工員にロイヤリティがないと感じたら、定期的に交流のための会議を開いたり、工員同士で本を読んで日本の文化を学んだりします」。

モーチャオはこのような工場を経験したことがある。電子機器工場で、チームリーダーが彼にグループ会議を開かせて学習の進捗状況を報告するよう要求した。彼は自信がなかったため、グループ会議の前に工場から去った。「学習について語ることに意味などなく、意味があるのはお金の話だけだ。」モーチャオは、このような資本家たちは、工員たちが何を望んでいるか理解していないようだと感じた。

工員の賃金を上げることは簡単ではない。ワンフェンは「利益率が低いカート業界では利益を上げることが難しく、賃上げは会社にとってかなり大きな出費になる」と言う。また、工員とオーナーの間には、相互の信頼関係を築くことが難しい。オーナーは工員が遅かれ早かれ去っていくと考えているため、賃金の引き上げには非常に慎重だが工員を雇いと考えている一方で、工員はオーナーが賃金を引き上げないと感じ、出て行ってしまう。

ダニーは、若者が日当を好み、それによって高いモチベーションを維持できることを知っているが、既存の条件ではそれが難しい。彼の考えでは、賃金の翌週または10日後払いは工場のオーナーが仕方なく使う手法だ。「お金はある種の抑止力を生み出します。酷い仕事をしたらお金を差し引かなければなりませんし、優れた仕事をしたらお金で報いることができます。少なくとも1週間や10日間分の賃金が押さえられているわけですから、簡単に辞めるとは言えないでしょう。」

工員との信頼関係の構築は学びや経験により得ることができるものだが、ワンフェンはこれまであまり深く考えたことがなかった。

宅配ライダーには宅配ライダーの悩みがある

宅配ライダーになったからといって、それで終わりではない。ガジャオショウは、現場近くに中古電動自転車の売買場を開いている。数百元で中古電動自転車を購入し、数ヵ月後には売却する若者を数え切れないほど見てきたという。ここでは1年も持てば長いと感じている。

宅配ライダーにも数えきれない苦悩がある。

指定された配達時間がどんどん短くなっていくことに加え、常に罰金のリスクがある。例えば深圳では、多くのライダーにとって最大の悩みは、社会保障制度がないためにナンバープレートを取得できず、ナンバープレートなしで外出すると罰金を課せられる可能性が非常に高いことだ。ガジャオショウたちは、街に受け入れられない「はみ出し者」のように感じている。

出世の道は工場よりも狭いかもしれない。優秀な宅配ライダーはスーパーバイザーやエリアマネージャーに昇進するかもしれないが、宅配ライダーはあまり重要視していない。ほとんどのエリアマネージャーの給料は6,000〜8,000元で決して多いとはいえず、より多くの収入を得るには、結局は自分で注文を取らなければならないからだ。

「教育を受けていない者にとって、宅配ライダーは、より多くの努力でより多く稼げるのが良いところです。しかし学位を持っているなら、上昇の余地があるようなキャリアを目指した方がいいのは間違いありません。世間では、学士号は宅配ライダーほど稼げないと言われていますが、それはすべて嘘です。」宅配ライダーを1年続けようが、5年続けようが、稼げる額にほとんど差がない、とガジャオショウは言う。

副業を始める同僚が増えた。中には賃貸仲介のアルバイトをしている者もいるし、自費出版のビジネスを始め、配達員の日常を撮影し、今では100万人以上のフォロワーがいる者もいる。かなり儲かりそうな規模のフォロワー量で、毎日多くの企業から声がかかるにもかかわらず、彼は現金化にはかなり慎重だ。「人々は私の日常を見るのが好きなのか、それとも私が掲載する広告を見るのが好きなのか?」 答えはまだ出ていないが、彼は宅配ライダーを続けることを決めた。

去ることを選んだ宅配ライダーもいる。梁進(リャンジン)は、5年間宅配ライダーとして走り続け、20万元を貯め、それを元手に麻辣担(マーラータン)屋を開業したが、競争が激しい都市の一等地では、大した儲けにはならない。「美団で稼いだお金は、最終的には美団に戻っている。」リャンジンは、店の収益の大半が宅配ライダーに取られてしまうと言っていたが、いつかはまた宅配ライダーに戻らなければならないのではないかと心配している。

孟鉄軍(メンティエジュン)は、ティックトックで宅配ライダーのストーリーを楽しんでいる。86年生まれの彼は、15歳でメガネ工場に入り、塗料を吹き付ける仕事をしていた。彼の仕事への熱心さを見たボスは、彼に生産加工を請け負うよう依頼した。「ボスは私に1元くれ、私は他の人に0.8元で仕事を任せて差額の0.2元を稼いだ」数年後、彼は初期資金として20万元を貯めて自分の工場を開き、一般工員から工場オーナーへと成長し、今では月に4万元以上を稼いでいる。

メンティエジュンは一発逆転の稀なケースだが、黄色(美団)や青(饿了吗)のユニフォームを着て街を走り回っている宅配ライダーの若者は、努力で状況が変わるとは思えない。宅配ライダーも工場に残っている人も、都市で一稼ぎしたら地元で家を買い、結婚して子供を産むために最終的には帰郷するはずだ。

モーチャオは、ライダー同士でグループチャットをするのが好きだが、友達はほとんどできない。彼の言葉を借りれば、エリアのライダーグループでは、3日で話し相手が変わる。特に宅配ライダーグループでは、3ヶ月間走り続けられる人はあまりいない。

印象に残っているのは、夜中の2時までQQでチャットをしていた人で、アバターにアニメのキャラを使っていた。両親との確執から田舎から都会に出てきて宅配ライダーとして働いていた。モーチャオは、自分が楽しく話せる相手が見つかったと感じた。アルバイトの広告や荒らしで溢れかえっている宅配ライダー用のQQグループの中で、真の感情を持つことができた数少ない一晩だった。

約3週間後、そのアニメ少年はグループから姿を消したが、モーチャオはすでにそれを受け入れていた。宅配ライダーたちのQQグループは、まるで何かのステージのように、毎日のように人が出入りし、記録を残しては消えていった。

おわり


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