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マック難民の上を行くケンタ難民と寛容的な地元民

ケンタッキー

中国メディア「極目新聞」から「ケンタ難民をしながら大都会に残り、帰郷を拒む人たち」を紹介します。


最近は上海市徐匯区の美羅城ショッピングモール内にあるKFCによく「ケンタ難民」が集まってくるようだ。中には何時間も店内に居座り、喉が渇いたりお腹が空いたら、客が食べ残していったモノを頂き、眠くなったらシートの上で体を横にして昼寝をする人もいる。

先日この問題がネットユーザーの間で熱い議論を巻き起こしていた。ある人は「ビジネスに影響を与えず、他の客の食事に影響を与えない限り、何も間違っていない」と考え、またある人は「誰にでも困難な時期があり、過度に批判する必要はない」と考えている。

また別のある人は「ケンタ難民は主に働き盛りの男性で、自活のために安定した仕事に就くことも可能だし、公共の場で残り物をつまみ食いするのは見苦しいのでは」と考えている。

この男性は普通の客だ

ケンタ難民の一人である呉さんが語ってくれた。

「俺らのような大都会の浮浪者には、寝ることと食べることの2つの問題があるんだ。もちろんそれ以外にも、財布や身分証明書をなくしたり、夜中に石をぶつけられたり、怒りで目が覚めたら男が笑っていて怒りが引くと同時に恐怖が襲ってきたり、まあとにかく大変なんだ」

呉さんは日雇い労働をしていて、最近は、行列に長時間並んでダフ屋を手伝うことで1日100元を稼いでいる。しかし毎日働けるわけではなく、普段は何もせず、とりあえずケンタ難民をしているといった具合だ。

上海に来て1年ほど経つそうだが、大都会での生活が苦労の連続とわかっていながら、なぜ故郷に帰ろうとしないのかと聞くと、彼は黙ってしまった。

街の浮浪者

平日の昼下がり、店内は比較的空いていた。呉さんはKFC1階の販売スペースから地下のイートインスペースに降りてきて、店内を一巡し、机の上に残っているフライドポテトを見つけ、それを手に取って食べ始めた。

黒いショルダーバッグに黒い靴を履き、黒髪を逆立て、顔には汗がにじんでいる。全身黒ずくめで身長もそれほど高くなく、人ごみの中でも目立たない格好だ。

記者が店内に入って話しかけようとすると、呉さんは警戒した。記者が悪意を持っていないことを知ると、微笑んで頭を下げ、残り物のフライドポテトを机の上に置いた。

呉さんと話をしていくうちに、彼は少しずつ自分の話を始めた。

昨年8月、彼は数人の老人たちと一緒に、広西省の田舎から数百元の現金を持って上海に出稼ぎに来たが、老人たちは次々と故郷に帰ってしまい、一人になってしまった。

呉さんはスマホの使い方を知らない。電話とテレビを見るだけで、番組の操作はできないそうだ。スマホにアリペイが入っているが、誰かに操作してもらわないと使えないと言う。

上海では、物流会社で荷物を運ぶ仕事を見つけたが、朝から半日働いた後、午後には身分証明書を持っていないという理由で解雇されてしまった。

呉さんには悪夢のような記憶がある。上海に来て1ヶ月ほど経った頃、午前3時まで走り回った後、図書前の入り口の石段で寝てしまったという。それから1時間後、誰かに石をぶつけられ、怒りで目が覚めると、すこし遠くに立っていた一人の男が口を開けて笑っていて、その男は人影を残しすぐに街角に消えてしまった。呉さんは、怒りが引くと同時に恐怖に襲われ、すぐさま荷物を背負って足早に立ち去った。

呉さんはかなり遠くまで歩いたところで、立ち止まり、ふとポケットを触り、心臓の高鳴りを感じた。財布がないことに気がついたからだ。図書館まで戻ろうかとも思ったが、後ろを振り返ると、空が明るくなり始めていて、すでにずいぶん遠くまで歩いてきていた。どこまでも広がる街並みを見て、財布は見つからないと悟った。

呉さんはそれ以来、仕事を探していない。たまにやる仕事は、ダフ屋のために行列に半日ほど並び、チケットを入手したらダフ屋に渡して代わりに100元を貰う。

なぜ他人の食べ残しを取るのかと聞いても、呉さんは笑顔を絶やさず「ペコリ」と頭を下げるだけだ。理由はお金がないからに決まっている。深夜は24時間営業のコンビニでやり過ごすことが多い。エアコンが効いていて蚊がいないから屋外より快適だ。昼間はショッピングモールやファストフード店を探して仮眠を取る。たまにトイレの水道で簡単に顔を洗うくらいだそうだ。

浮浪者を1年近く続けている呉さんには嫌な思い出がいくつもある。コンビニで寝てしまった後、店員に追い出され、隠れて寝る場所を見つけ地べたに横になったが、目を覚ましたら体中蚊に刺されていることがよくあった。

ある日、真夜中の路上で「親切な人」がホテルで休ませてくれると言ってきた。「その人は体重が100キロ以上はありそうな太った年配の男だったが、一緒にホテルの部屋に入ったとたん、男が後ろから抱きついてきて、俺をベッドに固定してきたんだ」それ以来、道で会う「親切な人」とはホテルの部屋には一緒に入らないようにしている。

故郷から逃げ出すしかなかった

故郷から上海に出てきた理由を聞くと、呉さんは長い間黙っていたが、笑顔は絶やさなかった。

しばらくして呉さんは胸の内を語ってくれた。広西省梧州市の農村生まれの42歳。家族には2人の兄がいて、1つ上の兄は3歳年上だ。故郷の若者はほとんど街に出て行ってしまった。近年は、街の誰かが大儲けして物資をまとめて寄付し、村に配っていた。年末になると、村では最も困難な家庭の数世帯を選んで、米1袋、油1ポット、掛け布団1枚を各家庭に配っていた。呉さんはそれを望んではいなかったが、断ると相手の面子を潰し、恩知らずと言われてしまうので、逃げようと考えたのだ。

呉さんにはもう一つ理由があった。彼はまだ結婚しておらず、近所の人や親戚からも結婚を促されていたが、ほっといておいて欲しい気持ちがあったため、誰も知らない土地に行くことを決意した。

結婚に関しては、呉さんは若い頃に2人の女性と恋愛をしたこともあったが、吹っ切れたという。お金がないため、結婚しても自活が難しいことは明白だった。彼の兄は結婚相手を見つけたが、精神的な問題を抱えていた。また、10年以上前に年齢差が20歳以上ある若い女の嫁をもらった遠い親戚がいたが、その若い嫁は出稼ぎに出たまま、帰ってくることはなかった。それらの経験から、呉さんは結婚して子供を持つという希望を持てなくなってしまった。

「正直言って俺は面子だけを意識して、そのくせ薄情なところがあった。小さい時から実家は貧乏だったため、小学校4年生で地元を離れ、その後、広東省江門にある家具工場で工員として働いたが、手元に全く金が残らなかったんだ。バッテリー工場でも働いてみたが、お金を節約することができず、工員を辞めた後は、安定した生活ができなくなった」と呉さんが言った。

ここ数日、呉さんは目が赤くなったり、足腰が痛くなったりと体調を崩していた。彼は自分が病気と感じていたが、どこが問題なのかもわからないため、身体検査はしていない。

ある時、老人が残したビーフンを食べようとしたところ、その老人が「私は病気だからやめておけ」と呉さんに忠告したことがあった。呉さんはお金がないときは、他人の食べ残しを食べているが、最後に食べた人が、病気かどうかなんて知る由もなかった。

呉さんはそう話しながら、70代の年老いた母親のことを思い出していた。母親は何年も前から病気で体中が痒くてたまらなかった。家には薬を買う余裕がなかったので、母親は自分で薬草を摘んできて、家で煮て体をあたためていた。最近、呉さんは胃や腸の調子があまり良くないと感じ、漠然と大きな不安を感じていた。

会話をしている間、呉さんの目はずっと入り口のドアに向けられていた。目線が合うと彼は頭を下げ、私が返事をしないと、彼はまた癖のある笑顔を作り、小声で話し出す。以前、あるファストフードチェーン店で、他人の食べ残しを取った際にスマホを「奪った」という理由で警察に逮捕された人がいるという話を聞いたことがあった。店内には監視員がいると聞いている。呉さんは、明らかに残り物と分かった場合を除き、他人から何かを「つまみ食い」することはないそうだ。

実は呉さんも一度警察に連行されたことがある。保護施設に連れていかれ、そこで「故郷に帰りたいか?帰りたいなら、チケットを買ってやるから、この手紙に署名してくれ」と言われたが、呉さんは署名することなく、無料の朝食を食べた後、また街に戻ってきた。

最近になって呉さん少し「帰りたい」と思うようになったという。体調が優れないことが主な理由だが、実家であれば何が起こっても、そこは常に自分の家であるわけだし、今後いずれは帰らなければならないだからだ。

「もしかしたら、明日か数日後に、警察署か保護施設に行って、私を送り返してくれるように頼むかもしれない」呉さんがボソッと言った。

無数のケンタ難民者

実は、呉さんのような「ケンタ難民」は一人ではない。

9月10日午前、今日も記者は、上海市徐匯区美羅城ケンタッキーの地下一階に来ている。店内にいる数人の中年男性に記者の目が留まった。身なりは半袖短パンで、黒い肌をしていて、リュックサックを背負い、常に店内を観察している男性もいれば、店内で横になって寝ている男性もいた。

呉さんによると、彼らは単にエアコンが効いている場所で、スマホを充電して少し休みたいだけだそうだ。

なぜ彼らに注意が向いたかというと、店内全体に目を光らせている数人の男たちがいて、一度残り物を見つけたとなると、店内のどこにでも奪いに行ったからだ。

特に記者の注目を集めたのは、店内の北側に位置する「緑の服の男」で、テーブルに座って時折ティッシュで指を拭きながら、ずっと店内を観察している。

午前11時半、客がトレイを机に残したまま帰ると、「緑の服の男」は立ち上がり、その客がいた机に来て、紙箱の中身をトレイにひっくり返し、さらに机の上に置かれていた紙コップを数回振って、空であることを確認し、振り返ってまた元の席に戻った。

ほどなくして彼は再び立ち上がった。次のターゲットを見つけたようだ。この時、KFCの女性スタッフがちょうどトレイと紙箱を回収する準備をしていたたため、彼は前に入り込み、目で確認したが、残り物は見つからなかった。そして顔を上げて手を離し、笑顔で女性スタッフに何か話しかけていた。

青と白のストライプのシャツを着て、黒い帽子をかぶり、つばの下に数本の白髪が見える別の男性がいた。彼は机の上に魔法瓶を置き、両手にフライドポテトを握り、口の中で咀嚼し、目は周囲を観察している。お客さんが帰りそうになると、その白シャツ男は近寄ってトレイをゴミ箱の脇に持って行き、トレイを物色して残った食べ物を集め、空の紙箱や紙コップをゴミ箱に捨てる。

上海人の周さんは、このケンタッキーによく来ると言い、ケンタ難民の行為はいつも見られるもので、他のケンタッキーでもあるそうだ。「見ての通り、彼らの服装は悪くないし、それに食べ物を無駄にしているわけではないのよ。ただちょっと見苦しい行為ではあるけれど」と周さんは言った。

この店内には他にも、普段は日雇いの内装業を行い、趣味は店内のWIFIでゲームをするハルピン出身のおじさん。また、仕事をまったくせず、夜は近くの蚊がいない屋外で睡眠を取っている湖南省出身の男もいる。彼らはどういうわけか、支援を受けようとしない。

上海の地元の人が言うには、「このような事はとても一般的で、ケンタ難民がここを選ぶ理由は、比較的スペースが広く、無料のWIFIがあり、エアコンが効いているからです。実際には、彼らはここだけでなく別のショッピングモールでも見かけます。混み合う時間帯は外に出て、他の人に影響を与えないようにしているし、厳しくする必要はありません」

おわり


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