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福州路からあの上海書城が消える

上海書城

上海に住んでいたことがある方なら一度は行ったり名前を聞いたことがあると思う福州路のあの上海書城(書店)がまもなく閉店するというニュースがありました。

中国メディア「外灘画報」から「23年目の上海書城に別れを告げる」を紹介します。


ここ数年、実店舗の書店の運命は激変し、閉鎖や業態転換のニュースがよく聞こえてきた。

しかし上海書城に限っては関係ないと思っていた。

しかし先週の日曜日、福州路にある上海書城が突然、今年の12月12日から全面内装のため閉店することを発表した。上海書城と共に育った私たちは書店が姿を消すことを悲しく思った。

もちろん永遠の別れではないかもしれないが、書店は再開の時期が決まっておらず「全書籍閉店セール」を行うほどだった。

上海書城は最も長い歴史を持つわけでも、特別な物語が存在するわけでもないが、上海の人々の心の中にある最も重要な文化的ランドマークであることは間違いない。

7階建ての巨大な建物の中に、読むべきものがすべて詰まっている、まさに市民のための書店だ。

娯楽が少なかった時代、夏休みや冬休みのほとんどを本屋で過ごした。祖母はよく私を書店に連れて行ってくれた。私は6階の子供向けのコーナーに直行し、祖母は1階で健康に関する本を読み、父のために最新の上海の交通地図を買って帰った。

1998年にオープンしてから20年以上、上海書城は消えゆく福州路のカルチャーの最後の砦となっていた。

閉店のニュースを聞いて上海書城に行ってみると、みんなそれぞれの方法で別れを惜しんでいた。

上海書城に別れを告げるのは忍び難い

前回、上海書城に来たのは8年前。高校3年生だった私にとって、本屋に行くことは親が認めてくれる数少ない娯楽の一つであり「教材を買ってくる」という口実がとても重宝した。

4階の教材コーナーでクラスメイトと「精編」の答えを写し終えたら、2階に行って文芸コーナーで日が暮れるまで小説を読んでいた。当時、私はいつもこう思ってた。将来は中国文学を選考し、堂々と小説を読めるようにしなければ、と。

その後、念願の中国文学科に入ることができたが、上海書城に戻ってくることはなかった。

そして今日、久しぶりに懐かしの書店に戻ってみると、全く変わっていなかったことに驚いた。

各フロアの書籍カテゴリーや展示内容は、8年前と同じだ。私は体が覚えている記憶を頼りに、2階のエレベーターの右側にある本棚の列に、お気に入りの本の出版社をピンポイントで見つけることもできた。

何年経っても、ベストセラー作家は東野圭吾と村上春樹のようだ。

ただ違うのは、今の書店は私の記憶の中のものより、ずいぶん寒々しいことだった。閑古鳥が鳴いている訳では無いが、かつて混雑していたエレベーターは行列を必要としなくなっていた。

ただ書店のスタッフに言わせれば、先日からは近年稀に見る客入りだそうだ。

「来店客の多くはセール目当てで来ています。今日は平日にも関わらず、週末のような賑わいです。」

書店内のすべての書籍が半額セール対象で、長い間書店に足を踏み入れていなかった多くの客を魅了している。雅梅(ヤーメイ)さんもその一人だ。

彼女は上海書城に深い愛着を持つ80年代生まれの女性だ。学生時代、お小遣いを持って本屋さんに行くのが、毎週の楽しみだったと言う。

「あの頃、親にいろんなものを頼んでも買ってもらえなかったけど、本だけは例外でした。本を読むことだけは良いことだと思っていたようで、本を買うためであればお金も出してくれました。」

大学に進学して学校の図書館に行くようになり、上海書城に行く機会が減った。近年はさらにネットショッピングや電子書籍に依存するようになり、福州路には5、6年は来ていなかったという。

ヤーメイさんは、書店が閉店するニュースを聞いても、最初は悲しくはなかったそうだ。しかし実際に慣れ親しんだ建物に入り、本棚に貼られた「23年間、ありがとうございました!」という張り紙が目に入り、「より良い未来のためにさよなら」のメッセージを読んだ時、彼女は胸が締め付けられるような思いがした。

さらに良くなるための別れ、とはいえ、書店では悲観的な意見が飛び交っているようだ。

出版社の中には「半額セール」の取引を嫌い、書店にあるすべての本の返却を求めるところもあった。一夜にして、多くの本棚が空っぽになり、棚の壁がむき出しになって立っていた。

スタッフの間では「店がなくなったら、自分たちの運命は移動させられるか、解雇されるかのどちらかだ」という噂が流れていた。「少なくとも3分の1は解雇されるだろう」と推測している。

最大の関心事である「いつ再開されるのか」については、誰も明確な答えを出せないようだ。

少なくとも半年と推測する人もいた。入り口の警備員は諦め顔で言った。「建物全体を建て直さなければならないし、私に言わせれば一年では足りないだろう。」

今回のセールで販売された書籍の中には「高齢者にスマートフォンで遊んでもらうための指導法」という予想外のベストセラーがあった。

半日の間に書店で3人の老人が店員にその本のことを尋ねていたが、残念ながら「早朝に売り切れました。」と言われてしまったようだ。

オンラインショッピングや電子書籍の出現により、実店舗の書店は大きな変革を迫られている。しかし、人によっては、紙の本を捨てることができず、またネット時代に対応するための手段でもあるのだ。

書店は彼らにとって最後の文化的避難場所なのかもしれない。

かつては華やかな場所だった上海書城

1998年12月30日にオープンした上海書城は、その膨大な量と豊富な書籍で、瞬く間に街の話題をさらった。

延べ床面積が約40,000平方メートル、営業エリアが10,000平方メートル以上の上海書城は、7階建ての店舗スペースを有している。今日に至るまで、上海の書店の中で、あえて書(本)の城(街)を名乗る勇気のある書店は、他にはない。

当時、この書店にはチケットを買わないと入場できなかった。福州路、広東路、湖北路、福建路とぐるりと回って、何千人もの人が行列を作っていた。南京、蘇州、杭州から電車に乗って、上海書城に巡礼に来た人もいたくらいだ。

「昔は、本といえば路上のキオスクのお供でした。上海書城に入って立派な調度品を見たとき、本には優雅さ、ファッション性、美しさが伴うものだと感じ、これが本当に読者に自信を持たせることになるのだと思いました。」浙江省文芸出版社の郑重颇社長は、上海書城の開店時を振り返って感慨深げに語った。

インターネットやスマートフォンがなかった時代、書店は外界への数少ない扉だった。

上海書城の全盛期には、チェスの名人である聶衛兵、映画監督の謝晋、スポーツ界のスターである姚明や郎平、作家の莫言、賈平凹、王蒙、余秋雨、易中天など、多くの文化的著名人が挨拶やサイン会を行っていた。

2008年頃、上海書城の経営状況はピークを迎えていた。新華社メディアグループの江利副社長は、当時の1日の売上がピーク時には200万元に達していたと振り返る。「休日になると、エレベーターは人でいっぱいでした。」

6階の児童書売り場は郑渊洁の童話に夢中になっている子供たちでいっぱいだったし、中学生たちは二人一組で来て、4階で教材を買い、残りのお金を2階の若者文学に使っていた。外国文学の売り場では若いカップルがデートをしていたし、職場に入ったばかりの人たちはそのまま5階に行ってコンピュータを学ぶための教科書を探し、新米の母親は育児書を読み、お年寄りは読書コーナーに座って健康管理の本を抜粋して読んでいた。

上海書城は一つの世代の精神世界の縮図だ。

インターネット時代の到来で、実店舗の書店はどこも少なからず苦境に立たされているが、上海書城もその例外ではない。

「今、読者はオンラインで本を購入し、情報を得るためのチャネルも多い。膨大な数の書籍の種類を取り扱う上海書城のビジネスモデルは、現在の消費者の動向にとても適したものではなくなっています。」

そのため、上海書城では今回の閉鎖を機に、今後の発展の方向性を再検討したいと考えているそうだ。

「元々、上海書城の事業の90%以上は書籍に特化していましたが、今は体験エコノミーの時代であり、読者も社会的機能や文化的、創造的な製品を提供することを期待しています。これらのニーズに対応するために調整していく予定です。」

「好むと好まざるとにかかわらず、店舗としての書店の方向性は変化しており、上海書城も例外ではありません。」江利氏が言った。

色あせない福州路

福州路を歩けば、生き残りをかけているのは上海書城だけではないことがわかる。

福州路は、かつて上海の「文化通り」と呼ばれ、書店や出版社、文学的な宝物や珍品、絵筆を売る店がたくさんあった。

24時間営業の人気書店、手頃な価格の淘書公社や、定期刊行物のコピーを販売する上海書店などなど、この道はまさに本のためのストリートだった。

オンラインショッピングや電子書籍の登場により、従来の書店は、価格、数量、新刊のスピード、情報検索などの面で競争力を失い、ただでさえ競争力が低下している。

その結果、近年、福州路にあった多くの出版社が移転し、文房具店が店じまいし、思考楽書局、上海科技書店、商务印書館なども閉鎖してしまい、通り全体がかつてのような活気を失ってしまった。

古籍書店、美術書房、外文語書店、百新書局などは残っているが、かつてのような活況さはない。彼らの存在はこの文化通りの最後の尊厳を支えているようだ。

実店舗の書店は本当になくなってしまうのだろうか?もちろん、答えは「ノー」である。書店の需要は変わっても、本好きの人たちはずっといてくれる。

福州路の書店の多くは、この変化に対応して自らを変革しようとしている。

外文語書店の4階では、もともとあった日本語売り場が改装さ、「松坂書店」となり、日本のマンガや雑誌、写真集などが販売され、日本のマンガファンに親しまれている。

1912年に建てられた百新書局は、古本屋とレンタルショップだったが、昨年、コーヒーと花のコーナーを設けてリニューアルオープンし、ショップの大部分がクリエイティブな商品の販売に充てられている。

そして上海書城も変化の激流に飲み込まれつつある。

リニューアル後の上海書城では、書籍の量を減らし、「より小さく、より洗練された」店舗へと移行することが考えられる。おそらくネットで話題の有名書店の成功体験からも学び、コーヒーを作ったり、文化的な創造物を開発したり、書店をライフスタイルに変えようとするでしょう。

上海書城を出る時、レジの前でヤーメイさんと再会した。

連れて来た娘さんのために児童書を束で購入していた彼女は、自分のための本が一冊も無いことに気づき、恥ずかしそうに「本を読む時間が少なくなってしまった」と言った。

おわり


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