4月5日は中国の清明節と呼ばれる祝日です。この清明節は、中国の四大伝統行事の一つで、一般的には家族のご先祖様のお墓参りをする日となっています。ちなみに残り三つの伝統行事は春節(旧正月)、端午節(端午の節句)、そして中秋節(中秋の名月)といずれも日本でも一般的なものですね。
ただ残念なことに、私が住む上海は現在、都市全体がロックダウンされており、外出は一切許されなず、祝日であっても家に引き篭もる他ありません。
久しぶりの更新となりますが、今回は中国メディア「深燃」から「留学の魅力がなくなった?大企業には入れないし、中小企業には嫌われる」を紹介します。
2022年3〜4月の就職・転職シーズンも半分が過ぎ、かつては引く手あまただった留学帰国組は今大きなプレッシャーを感じている。SNSでは「秋採用組は全滅確定」「完全に就職難!」と叫ぶ留学生で溢れ、帰国子女がそのまま「躺平(タンピン)」に直行してしまうケースも少なくない。
原因は人材の需要と供給が完全に崩壊しているからだ。新型コロナ発生後、海外の中国人留学生が帰国する傾向が強まったこともこの状況を後押しする結果となった。就職のため中国に戻る留学生の数が、2021年に初めて100万人を超えたという統計もあるそうだ。需要側においては、国内企業は経済の下り坂に向けて財布の紐の引き締めを図り、コストダウンや効率化を声高に叫んでいる。また供給側の問題としては、多くの留学生が即戦力となるスキルを備えておらず、仕事のニーズにマッチしていないこともあるだろう。
今回「深燃」では、就職活動に苦労している5人の帰国留学生に話を聞いた。昨年の秋採用から今年の春採用まで面接を受けたが、大企業への入社は難しく、中小企業では高学歴が嫌われるため、就職先が決まらなかった者。なんとか大企業に潜り込めたものの、過度の残業に耐えきれず、退職の道を選ぶ者。
あるいは内定は貰えたものの、留学費の50万元(900万円)に対し、月収8,000元(15万円)しかないという厳しい事実を受け入れた者。さらには、最終的には就職はできたものの、その過程で紆余曲折があり、他業界への転身を考えてオンラインコースに入学した者、適切な仕事が見つからず、なぜかエキストラ俳優となってしまい、以前のような真っ当なオフィスワーカーに戻れなくなった者など、一人ずつご紹介しよう。
大企業はともかく、中小企業では私のような高学歴は嫌われる
宇哲|27歳 西安
2021年10月に修士課程を卒業し、イギリスから中国に戻ってきました。当時は秋の採用シーズンの終盤で、上海の20社を超える会社に履歴書を送り、最終的に2社から内定をもらいましたが、いずれもエンジェル投資ラウンドを実施している小さな会社で待遇も悪かったため、最終的には入社しませんでした。
今年の春採用シーズンまでに、集中的に履歴書を提出し、面接を行いました。現在私は西安の実家暮らしのため、西安の企業だけに応募することにしました。履歴書を100通ほど送り、20社近くと面接を行いましたが、まだ就職先が決まりません。言えることは、ここ1、2年の雇用情勢は非常に厳しく、大企業にはほとんど空きがなく、中小企業も「優しくない」状態です。
ある大企業の面接について少しお話しします。大手IT企業のグループ面接で、応募者は9名、面接官は4名、一通りの自己紹介を終えて感じたのは、みんな学歴がよく、厳しい競争になるな、ということでした。面接もこれまでにないほど高圧的で、終盤には面接官から「途中であれだけ提案したのに、なぜ最後のまとめは他の学生に任せたのですか?」と言われてしまいました。面接では、各応募者に自己推薦について語る時間が与えられ、結果3名が落とされました。
大企業の面接については、すでに少しは理解していたものの、面接官が鋭い質問をするので、強いプレッシャーを感じ、大きなストレスでした。結局、他の応募者と目を合わせることもなく、ただ自分の意見を述べ、3人の候補者が消去法で残りました。この大企業の二次面接に合格し、現在も続報を待っているところです。
当初は、大企業に行かなくても、自分を鍛えてくれるポジションであればいいと思っていましたが、中小企業の面接を経験してみると、居心地が良いとは言えませんでした。 例えば、「君は優秀だからうちには来ない」「当社のような小さな会社には長くはいられないだろう」「あなたが期待する給料はとても出せない」と言う会社が必ずありました。大学院生や留学生のような社員は必要なく、多くは大学生や専門学校生を募るような、そんな自信のなさをひしひしと感じました。
他の大学院生と一緒に面接を受けた時、面接官が希望額を聞いてきたので「6,000元(11万円)」と答えたら、もう一人の面接官が西安の最低賃金を知っているか?と言ったのをはっきり覚えています。最低賃金が1,700元(3万円)なのに、そんな高給が提示されるとは「非常識にもほどがある」と言いたそうな顔をしていました。
また、人事部が頻繁にKPIを更新する必要がある企業では、面接回数が多いのに採用がほとんど行われず、無駄な面接に参加することが多くなるという悪い現象も起きています。国有企業の役職はほとんど公開されておらず、入るのが特に難しく、曖昧なルールを設けているところもあります。
現段階では、給与はあまり気にせず、現場で実務を学びたいし、5年後の目標もあるので、焦らず、あまり高望みをせず、平均的な給与でいいと思っています。それに留学の費用とその後に得られる給料は、比較してはいけないと思っています。留学は知識やスキルを高めるというより、考え方、自立心、知見、ネットワークなど総合的な質を高めることができるからです。
全体的に感じるのは、「大企業は競争が極めて激しく、簡単には入れないという事と、中小企業はあまり私たちを歓迎してくれない」ということです。 今のところ、比較的満足のいく2社の選択肢が手元にあります。しばらくは西安で仕事をしてみて、もし発展の余地が限られているのであれば、やはり北京か上海で仕事を探すことになるかもしれません。

大企業での仕事が合わず、退職してギャップイヤーに突入
張楽楽|27歳 北京
2020年にイギリスの大学院の修士号を取得してから、早2年が経ちました。留学を選んだ当初は、就職のことはあまり考えていませんでした。私の学士は中国の211の優秀な大学でしたが、国内で勉強を続けるか、海外の大学院を受験するか、長い間悩んでいました。当時、中国のトップ2の大学院も受験したのですが、面接で落ちてしまったので、イギリスの大学院に出願することにしました。
新卒で就職活動をする際、北京と上海の都市に狙いを定めました。私は新卒でIT企業に応募していたのですが、中国のIT大手やユニコーン企業はほぼ全てに応募しました。筆記試験や面接の対策として、インターネットで色々調べたり、特にIT企業で働いている同級生に面接のテクニックを教えてもらったりしました。
20社以上の面接を受け、海外の大学院卒という学歴がプラスになることはないとはっきり感じました。「海外の一流大卒でなければ、国内の985卒を採用したほうがいい」と直接言ってくれた面接官もいたほどでした。
就職活動中に5つの内定をもらいました。ほとんどがマーケティングとオペレーションの職務で、どれも特に興味があるものではありませんでしたが、私はその中から最も給料が高い会社を選びました。その時の考え方は至ってシンプルでした。海外留学は3年間だけで、中国には20年以上生活してきたわけだし、せっかく中国に戻るのだから、中国のIT企業を選んだ方が良いだろうという、非常にシンプルなものでした。
しかし、入社してからは20時前に退社できることはなく、22時に会議を行うこともあったほどです。 半年間耐えた後、冷静に考えて退職を選びました。それで新卒の資格を失い、その後もなかなか職が決まらず、今は1年間活動を休止しています。

50万元(1000万)かけて留学しましたが、両親は、学費を回収するのに何年かかるかとか、留学までして良い仕事につけないとまずいとか、そういうことは言いませんでした。ですので、あまり仕事に追われることもありません。私は、イギリスでの2年間は、思考、視野、学習習慣の成長にとても有益でしたし、もう一度選ぶとしたら、やはり海外留学を選ぶと思います。
大手IT企業を辞めた後、外資系企業の面接を受けましたが、留学中にその企業の本社にインターンシップに行っていたこともあり、面接中も面接官とスムーズにコミュニケーションがとれ、私の能力を認めてもらえました。しかし給料とマッチングするポジションがないということで、最終的には決まりませんでした。
今、中国で仕事を見つけるのは難しいと思いますが、それは今の世界的な状況とも関係しています。 これから1年間はギャップイヤーとして、じっくりと就職活動を進めるつもりです。
留学に50万元かけて、内定1つ、月給8000元
陸遅|24歳 北京
2021年10月に中国に帰国し、就職活動をすることになりました。私は映画や映像の業界で働きたいと考えていましたが、学士を取得しても就職は難しいと考え、1年間海外留学に出て、業界の動きを見て戻ってこようと思っていました。
就職活動と秋の採用活動のために、10月に帰国することにしました。中国に帰国する前の8月と9月は、隔離期間後すぐに面接ができるようにと、インターネットでいろいろな会社の仕事を探していました。
3回ほど面接を受け、楽しく受け答えできましたが、少し不安な気持ちもありました。
現在の雇用状況を知っていたので、給与面ではあまり期待しておらず、手取りで8,000元ほどもらえれば良い方と思っていましたが、幸いこの会社はそれに応えてくれそうでした。
もちろん、海外に行くための費用に比べれば、たいしたことはありません。海外に行くことを計画して以来、あらゆる出費を細かく記録してきましたが、合計50万元を使いました。これは今の給料では、飲み食いせずに5年で回収しなければならない金額です、もちろん税金は含まれていません。私の家は決して裕福ではないため、将来はこのお金を親に返そうと考えたこともあります。
しかし、留学は純粋に金銭的な観点だけで評価されるべきものではありません。海外留学は、外の世界を見て視野を広げるための親の子供への投資だと思います。また、イギリスでの留学期間は1年と、本国で2〜3年勉強するよりもはるかに短く、その代わり、早く職場に入れるという時間的なアドバンテージがあります。
私はカルチャーの仕事をしていますが、より高い視点も必要だと思います。一つの環境に閉じこもっていてはいけないし、海外に行くことで様々な影響も受けます。ですので、すべてにおいて後悔はありません。今は新型コロナウイルスの影響で、自宅でオンライン授業を受けているだけの留学生もいて、英語力を鍛える機会がないのが残念なところです。
もう少し今の会社にいて、業界に残るような自分の作品を持ちたいですね。
今、海外留学生の競争力が落ちているのは、卒業証書を持って帰ってくるためだけに海外に行く人が多くなったことも関係しているでしょう。留学を控えている学生にアドバイスするとしたら、一生懸命勉強すること、この機会に英語を鍛えること、学校で何を学びたいのか、なぜ親は送り出したいのか、どんなメリットがあるのかを理解し、早めに計画を立てること、などでしょうか。
50社以上受けて内定が出ず
小鹿|27歳 上海
学部時代はドイツに留学し、応用化学を専攻していました。卒業後1年間は中国に戻り、形式的な仕事とインターンシップを経て、今度はイギリスのマンチェスター大学で1年間、やはり化学の修士を取得し、2021年9月に再び中国に帰国、外資系企業に行って研究開発をするという明確なキャリアプランを持っていました。
卒業時はちょうど秋の採用時期で、ユニリーバやP&G、バイエルやファイザーなどの有名製薬会社を中心に50社以上応募しました。就職活動中は「内定多数もらえる」という自信があったのですが、2カ月が過ぎ、最終面接を受けたのは11月中旬でした。
就職活動は、私にとってとても大変なものでした。化学専攻は元々、就職も簡単ではなく、化学で研究開発をしようと思ったら、基本的には研究室に入らなければなりません。何度か面接をした結果、私のライバルは復旦大学、交通大学、南洋理工大学、UCLなどの優等生ばかりで、博士号を持っている人もいました。
最終面接の案内が来る前に私は落胆し、このまま業界転向しようかとも考えました。データアナリストなら給料もチャンスも将来性もあると思い、データ解析のコースに入学しようと思いました。さらには化学とはまったく関係のない自動車メーカーにも募集したこともあります。その間、さまざまな面接指導のクラスを受講しましたが、P&Gの質問に対して、英語版と中国語版の両方を何度も暗記して、それぞれ2つのストーリーを用意しました。ほぼ毎日、深夜3〜4時まで起きていて、翌日には面接を受けなければならないほどでした。
最終面接直前に中止してきた外資系企業もありました。私が電話で問い合わせたところ、先方の態度がとても悪く、言い争いになった後、先方から再度面接をアレンジすると言われたが、その面接の直前に、私が納得していないので面接は中止になったと言われてしまいました。
面接には、入念に準備を行い、しっかり復習して挑む必要があります。最終面接の前には、その会社の公式サイトに目を通し、最近の開発状況や新製品、共同開発プロジェクトなどを正確に把握するようにしていました。最終的に意思決定者に会うとき、その会社についての見識を共有できるのは大きなプラスになります。その中で「自分の言っていることは正しい」という意味での自信が、「本当に御社に入社したい」という意味での確信に変わるのです。
留学生の就職環境は昔ほど良くないのは確かです。大学のランキングも見るだろうし、英語マスターは当然とも思われるでしょう。また外資系企業であっても海外の学歴でない候補者が好まれることも普通です。しかし、私は楽観的に考えています。5年間のドイツでの学部留学は私の能力を高めてくれました。ドイツの大学は非常に厳格で卒業するのが難しく、私は「卒業できるまで中国に帰らない」という誓いを立て、やり抜くことができました。
入社して半年、仕事も給料も雰囲気もとても満足しています。ドイツ留学は年間15万元、イギリス留学は年間35万元くらいかかるので、それを5、6年で取り戻せればベストです。マネジメント研修のローテーションの中で、自分にとって最適な場所を見つけられればと思っています。

帰国後最初の給料は6,500元、今年は「プロのエキストラ」を続ける
許樹|26歳 北京
私はアメリカでビジネスを学び、学費は80万~100万元(1,500〜1,900万)でした。2018年に中国に帰国して最初に就職したのは五つ星のラグジュアリーホテルで、給料はわずか6,500元でしたが。そのうち500元は管理職研修生が会社と交渉して貰えるようになったものです。
私も両親も、留学のコストパフォーマンスを具体的に計算しようと思ったことはありません。私にとって留学で一番大切なのは「経験」です。この留学が私にもたらしたものは、学位や留学生としての地位以上に、違う世界を見て、新しい人生を経験したことでした。そして、大学の4年間は、私にとって決して無駄な時間ではありませんでした。大学に入学してからは、両親が捻出した生活費は受け取らず、すべて自分で稼ぎ、奨学金までもらえるようになりました。帰国後の最初の仕事は、実は新卒のときに応募した国際プログラムでした。
この国際プログラムは、アメリカで1年間働いた後、中国に1年半戻って働くというもので、帰国して働いていた職場も世界的に有名な五つ星ホテルでした。しかし、2018年に中国に本帰国した際、この仕事が自分に合っていないと感じ、わずか半年で退職してしまいました。2つ目の仕事は、主にハイエンドのインバウンド観光サービスを提供する観光業界でした。
中国に戻ると、国内で学士や修士を取得した人たちと同じスタートラインに立ち、留学生が持っているアドバンテージは、おそらく「留学生」という肩書きだけだと感じていました。給料の交渉など、国内の転職市場のスキルをあまり知らなかったことも原因かもしれませんが、2つめの企業でもらえた給料は7,000元ほどでした。
その後、2020年に新型コロナが始まり、全員の給料が半分ほどになりました。その後、自分で副業を始めた結果、副収入が1万元近くになりました。2021年後半になってもホテル業界は低迷を続け、会社も人員整理をしたいと言ってきたため、12月に退職しました。
退社後、春節が近かったこともあり、1カ月ほど国内旅行に出ました。春節後に深圳にいたのですが、新型コロナの影響で戻ることができなかったため、ひとまず大理に行く事にし、そこでボランティア活動を始めました。
その間、履歴書もたくさんネットに投稿しましたが、旅行業界を離れて、違う業界に進みたいと考えていました。当然履歴書の返事が来ることもなく、また、上海は今、新型コロナの影響が深刻なため、次の面接を手配することもできません。
上海や北京などの大都市で働く私の友人は、大企業のレイオフや今年の厳しい転職状況などの情報を頻繁に送ってきます。大企業に勤める私の同級生も最近、「やる気ゼロ」とグループチャット内で発信しています。
私は今のところ、大理での生活に満足しています。少し前に、友人と一緒に、この大理で撮影の「エキストラ俳優」を経験し、ボランティア期間が終わったら、新しい経験として日雇い100元の「プロのエキストラ俳優」を続けるつもりです。おそらく、すぐに従来通りの仕事に戻ることはないでしょうから。
今や海外留学は当たり前で、私の周りにも海外留学経験者は多く、卒業後すぐに起業した人もいますが、帰国して現実を受け入れ、結婚して子供を産み、普通に生活している人も多くいます。どんな時でも「気の持ちよう」が一番大事で、自分との折り合いを見つけることが大切です。
おわり