「投資家ジムロジャースが警告、3年以内にヤバいことが起こる!(上)」の続き。
アメリカはいつも自分達のやり方でやるべきだと考えている
質問:次に、今世界で最も重要な2カ国間関係である米中関係についてお話しましょう。バイデン政権が発足して間もなく、中国をアメリカの「最も深刻な競争相手」と指摘しました。なぜアメリカはいつも「ナンバーワン」になりたがるのでしょう?私たちからすると「調和」あるいは「異なるが調和していく」というのがいいと思いますが?
ロジャース:まさにその通りだ。
私は、アメリカと中国は一緒に仕事ができると信じている。中国はこの30~35年の間、アメリカと協力してきたし、アメリカは中国製品を輸入するなど、これらの協力関係によって利益を得ている。 二国間の調和のとれた関係は、今後も継続し、共に成功していくべきものだ。
しかし、残念なことに、アメリカは常に自分のやり方で物事を進めるべきだと考えている。
Unfortunately, and yes your insight about America, America always thinks everybody has to do it their way.
歴史上には、自分の思い通りになると思っている国がたくさんあった。アメリカ人としてこんなことは言いたくないが、今のアメリカはそうなのだ。現在でも、欧米の政治家の間では「ゼロサム」の考え方が主流であり、権力や武力の優位性を信じている。中国の「王道」や「共生」を本当に理解している、あるいは信じている政治家はほとんどいない。
私は、アメリカと中国が腰を据えて話し合うことを望む。最高のラグビーチームを結成するようなもので、私は自分のチームが最高だと言い、あなたはあなたのチームが最高だと言う。それはいいとして、どちらが勝つか競争しようではないか。それだけだ。相手を死に至らしめなければならないということではない。
中国とアメリカは協力できるし、協力すべきで、それが世界のためになる。私は中国の歴史を読んだことがあるが、中国には輝かしい歴史があり、長期的かつ忍耐強く物事を見ていることがわかる。しかしアメリカの場合は必ずしもそうではない。私は、お互いに学び合い、協力し合い、アメリカは中国にたくさんのものを売ることができるし、中国もまたアメリカにたくさんのものを売ることができる。
しかし、あなたが正しく指摘しているように、現時点では、アメリカは「アメリカ・ファースト」でありたいと主張し、誰もが「アメリカ流」に物事を進めるべきだと考えている。
But as you have rightly pointed out, this particular point in history, America seems to insist that they be on top and everybody has to do things the American way.
歴史を振り返ると、時代や国を問わず、自国で何か問題が起きれば、政治家は必ず外国人のせいにする。なぜなら、外国人を責めるのは簡単だからだ。彼らは同じ肌の色をしていないし、同じ言葉を話していないし、同じ食べ物を食べていないし、同じ服を着ていないし、同じ信教を持っていないし、すべてが異なるからだ。なので問題があると外国人を探すわけである。
これが今、アメリカで起きていることだ。アメリカの元大統領ドナルド・トランプは、メキシコ人、ドイツ人、韓国人、中国人など多くの人を非難した。中国は今や成功した大国ですから「スケープゴート」として利用されやすいというわけだ。
誰かが立ち上がって、彼らに言うべきだ。ちょっと待ってください、歴史上、このようなことが起こるとどうなるかというと、喧嘩をすれば、みんなが苦しむことになるということを。
We can fight and we all suffer. We can work together and we can all prosper.
しかし、問題は、彼らが聞く耳を持たないことだ。
質問:中国とアメリカは、多くの学者が予測している「トゥキディデスの罠」に陥る可能性があると思いますか?
ロジャース:あなたが「トゥキディデスの罠」と呼んでいるものは、数千年に一度、いわゆる新興勢力と衰退勢力の衝突が起こるものだ。もちろん、必ずしも歴史が繰り返されるとは言いきれないが、そうならないよう、協力で解決する方法もあるかもしれない。
歴史そのものには多くの答えが含まれている。
But you know, history is very informative.
「トゥキディデスの罠」にはまるようなことがよく起こるが、歴史は必ずしもそうなるわけではないことも教えてくれる。あるいは、別の方法で起こることもあるかもしれないが、ほとんどの人はそれに気づかないし、歴史を知らないし、そこから学ぶこともない。
あなたがすべきことは、中国語で協力関係についての本を書くことだ。そして、私は英語を使ってこの本をアメリカでもっと露出させようと思う。

質問:現在の世界情勢は、第二次世界大戦前の1939年に似ているという人もいれば、1971年に似ているという人もいます。「衝突」は起こりそうですか?
ロジャース:1930年代、世界大恐慌の時代には、世界中が借金をし、貿易戦争が行われていたが、経済は一向に改善される気配がなく悪化していた。これらの要因が重なり、和解することもできず、軍事衝突となったのだ。
戦争とは、多くのお金をかけ、多くの財産を破壊し、多くの命を奪う行為だ。あなたや私が、ここに座って戦争の愚かさを語っても、耳を傾けてはもらえない。なぜなら、彼らは感情に流されてしまうから。
政治家は、通りの向こう側にいる人たちを「彼らは悪だ、我々とは違う。彼らは私たちを傷つけ、私たちの社会システム、生活様式、そして私たちの命さえも脅かすだろう」と言う。
これを聞いた聴衆は興奮し、さらに多くの人にこのプロパガンダを話す。そうすると、より多くの人々が「彼らは脅威だ」と確信するようになる。
そして、次のイデオロギー・プロパガンダの波が押し寄せてくる。「敵は、憎むべきものだが、恐れるべきものではない。 我々は彼らよりも優れているため、短期間で勝利を収めることができるだろう」誰もが勝てると思っているし、今でもたった3~6カ月で勝てると思っているが、実は戦争はそう簡単には終わらないのだ。
私がこのようなストーリーを作ったわけではない。人類の戦争の歴史を見てみたいと思っている人なら、このようなシーンは必ず目に飛び込んできて、あなたは衝撃を受けるはずだ。
人間の愚かさや近視眼的な考えが、そのような不合理なことを可能にしている。それが人間の本性だから仕方がない。
あなたと私は、彼らに戦争は狂気であると説得し、ビールを飲み、北京ダックを食べ、歌い、踊るのは良いことだと伝えることができると思っている。
でも「白人とは食べたくない」「アジア人とは食べたくない」という人もいるだろう。政治家が物事を選び始めると、おかしなことが起こりだすのだ。
さらに言えば、中国はより抑制的な政党であり、アメリカによるアプローチの結果として、中国が近年は「発言力」が大きくなったという見方もある。
もし私が中国だったら、貿易摩擦が始まったときに「反撃はしない、制限は設けない。我々はオープンにすることで成長していく。もしあなた方が制裁をかければ、あなた方へのダメージはより大きいものになるだろう。制裁などせず、共に成長していけば良いではないか。」と言っていただろう。
If I were China, I would say, okay go ahead. We know that what you’re doing is going to hurt you more than it’s going to hurt us. Don’t do it. We will just wait. We’ll prosper in the end.
質問:著書「危機の時代」の中で、世界経済の重心は「東」に移っており、21世紀は中国のものだとおっしゃっています。人が好むと好まざるとにかかわらず、これは「事実」であり「歴史的必然」であると、なぜそのような判断をしたのでしょうか。

ロジャース:いつものように、中国は資金があるだけでなく、自分たちが何をしたいのか、そしてどうすべきなのか、明確なビジョンを持っている。このような国の開発戦略が成功しないはずがない。
今の時点では、とても楽観的だと言える。歴史上、何度も偉大な復活を遂げた国は中国だけである。ローマは一度だけ、エジプトは一度だけ、イギリスは一度だけ偉大であったが、中国は三回も四回も復活している。
中国には災害もあったが、どんな理由があっても再び上昇してきた。他の国ではできないことだ。それが私の考えであり、またそれが実現されつつある。
私は、中国が21世紀で最も歴史的な国になると確信している。確かにまだ最も歴史的な国にはなっていないが、これからも上昇を続けるだろう。
I’m convinced that China will be the most historic country in the 21st. Certainly becoming it it’s not already the most important country in the 21st century and that’s not going to stop.
1984年に初めて中国を訪れたとき、私は強い好奇心と言い知れぬ恐怖心が入り混じって躍動した。当時、アメリカの中国に対するプロパガンダは、ほぼ一様に「中国は怖い」というイメージだったからだ。
アメリカでの教育で「洗脳」された私は、飛行機が北京の空港に着陸すると、心臓が飛び出しそうになり「私は撃たれるのだろうか」ということばかり考えていた。
1989年、私は上海からパキスタンまで車で移動した。中国西部にはまだ道路がなかったので、とても長いドライブだった。
実際に中国の地に足を踏み入れてみると、とても平和で素晴らしい国であることに驚かされた。
アメリカで中国人と会った時に「Hello, good morning, good afternoon, or have good day」と言っていが、本来、中国人の一般的な挨拶は、吃饭了吗(ご飯は食べましたか?)であった。
私は多くの中国人が朝5時から1日を始め、文句も言わずに献身的に働いているのを目撃した。生き残るために、より良い生活を送るために、必要なことは何でもするという姿勢だ。そして、このような姿勢であれば、国家の明るい未来が作れないわけがない。
35年前の中国を見たことがある人は、私の言っていることがわかるだろう。
奇跡のような出来事だった。
改革開放前の中国がどのようなものであったかは、欧米諸国の人であれば誰でも知っている。私が子供の頃、子供たちに食べ物を無駄にしないように感謝してよく食べなさいとアドバイスするとき、大人たちが最もよく言っていたセリフは「中国の子供たちがまだ飢えていることを忘れないで」だった。
だから私は、鄧小平は天才であり、20世紀の最も重要な人物に数えられるべきだと思う。彼が始めた変化は、21世紀において非常に重要なものとなるだろう。彼が中国にもたらした変化は、これからも中国を素晴らしいものにしていくはずだ。
彼は、いわば誰よりも「世界を変える」ことに貢献してきた。
「中国は21世紀の最も重要な国になる」それを認めない、あるいは好まない人もいるが、誰もそれを止めることはできない。

China is going to be the most important country in the 21st century. But there’s nothing anybody can do about it. It’s happening and it’s going to continue.
世界はよくなるのか
質問:あなたは投資家です。約10年前、中国の上海総合指数は3,000台でしたが、現在も3,000台強で推移しています。中国の株式市場は、米国のような長期的な上昇局面に乗れると思いますか?
ロジャース:中国の株式市場は、数ヶ月から数年にわたって上昇する時期もあれば、当然ながら下降する時期もある。それが世の中の流れだ。アメリカの株式市場は10~12年前から強気で推移しており、アメリカ史上最長の強気相場となっている。しかしアメリカの株式市場が長い間、弱気になっていた時期があった。
私がこのように言うと、中国でもどこの国でも同じだと思うが、株式市場には上昇サイクルと下降サイクルがある。今、アメリカの株式市場が置かれているサイクルは、上昇局面が比較的長く続いており、あと数ヶ月、あるいは1年、2年と続くかもしれませんが、永遠に続くわけではない。上がった後は株式市場でもどこの投資先でも下がる。
しかし恐れる必要はない。自分の知っていることだけに投資する姿勢に徹すれば、安値で買い入れをすることができる。「危機」を忘れないことだ。
質問:あなたの人生や投資に大きな影響を与えた本やルールはありますか?
ロジャーズ:投資に関しては、アメリカで古典と呼ばれている良い本をいくつか読んだ。「賢明なる投資家」は私に多くのことを教えてくれたし、「マネー・ゲーム」という本も読んだが、とても古いものだ。
大学で教鞭をとっていたとき、どの科目を勉強したらいいかと聞かれて、いつも歴史と哲学と答えていた。それを聞いた学生は、首を横に振って「いや、俺たちは金持ちになりたいんだ、あなたのようになりたいんだ」と言っていた。
しかし、半世紀の投資のプロとしての経験から、絶対的な確信を持って言えるのは「本物の投資家になりたいなら、ビジネススクールなどには入らず、もっと歴史や哲学を学べ」ということだ。
だから、歴史書を読めば、投資でも何でも大成功するかもしれない。
なぜなら歴史というものは常に繰り返されるからだ。大英帝国の数世紀にわたる興亡、第二次世界大戦における連合国とナチスの死闘、それぞれの歴史的出来事が起こったとき、世界は実際にどのように動いていたのか、その出来事にはどのような要因があったのか、その出来事が起こった後の世界にどのような影響を与えたのか、そしてその影響が今日の私たちの生活にどのように内在しているのか。
次は何をしようか、どこに行こうか、これを何度も考えることで、たくさんのインスピレーションを得ることができるだろう。
世界は予測できないかもしれませんが、起こったことは名前を変えてまた起こる。人間の本質は同じだから、いつもこのように何度も何度も起こるわけだ。ギリシャ人が書いたもの、ローマ人が書いたもの、キリスト教徒が書いたもの、多くの人が書いたもの。
しかし、歴史の片側だけを読むのではなく、どんなに「権威」があるように見えても、同じ情報源に頼りすぎてはいけない。 例えば、中国人が書いた中国の歴史だけを読むのではなく、オーストラリア人やドイツ人、アメリカ人が書いた中国の歴史も読むと、全く違う内容になるので、実際に起こったことを理解するチャンスがあるのだ。
例えば私の場合、5カ国の新聞を最低でも5紙は用意しなければならないし、自分の子供にも5〜6カ国のテレビを見せている。テレビに出ている人たちはみんな自分が正しいと思っているため、子どもたちには「全部見てからどれが正しいのか、何が起きているのかを考えなさい、盲目になってはいけない」と言っている。そうやって真実を知る、あるいは真実に近づくことができるわけだ。
あるいは、歴史に限らず、何であれ、異なる独立した視点を持たなければならない。例えば、美しさは、アジア風、南米風、欧米風に分けられます。何かに優れていたいと思うなら、世界全体を理解しなければならない。

質問:だからこそ「お得な情報の裏には情報がある」と言う人もいるのですね。 そして、その情報をどうやって手に入れるのでしょう。
ロジャース:それにはプロセスがあります。
Well, I will say that I didn’t wake up one day and know all of this.
私はたくさんの本を読み、たくさんの歴史を読んできた。私は世界を2周したし、中国国内を車で運転しながら4回ほど横断した。おそらくほとんどの中国人が行ったことのない場所にも行った。これらの経験はすべて、私が情報を得るための手段だ。
22歳のときは世界のことをほとんど知らなかったが、いろいろなところに行ってみると、人によって世界の見方がだいぶ違うことがわかった。あなたが理解しているものと、他人が考えるものは別物だ。だから、みんなの意見を聞いて、人の話を聞いて、自分の経験を加えることで、より多くのことがわかる。
質問:最後に、新型ウイルスは「止められない」勢いで、人間は「ウイルスと長く付き合っていく」ことを覚悟しなければならないようですが、一方で、経済は昔に比べて浮かれていないような気がします。昔、中国の有名な儒教学者である梁漱溟(リョウ・ソウメイ)は、父親からある質問をされたそうです。この世界は良くなりますか?同じ質問をされたら、あなたはどう答えますか?
ロジャース:当然答えは「イエス」だ。
世界には、良くなる部分と悪くなる部分が確実にある。
100年前、イギリスは世界で最も豊かで強力な国だったが、今はそのどちらでもない。深刻な問題を抱えており、国が再び破綻するかもしれない。(It’s got serious problems and maybe going who else, maybe going bankruptcy again.)
しかし、中国、ベトナム、韓国などでは、この100年で世界はより良くなったと言えるだろう。
これは、大国の弱体化、大国の台頭、大国の復活が人類の発展の規範であることを示している。 権力の回転は歴史的必然であり、この世界の仕組みの基本的な法則だ。
好むと好まざるとにかかわらず、歴史は歴史、事実は事実であり、それは何度も証明されている。第二次世界大戦、ベルリンの壁の崩壊、中国経済の急成長。
準備ができていれば、世界で何が起こっても、あなた個人にとっては、それが良い方向に向かうだけだ。
But if you are prepared, no matter what happens in the world, the world will be better for you.
1930年代、世界的な大不況の中、大金を稼いでなんとか出世した人たちがいた。だから、1929年にその質問を受けて私に聞いてみると、「世界は悪くなったが、良くなった人もいるし、かなりの数の人がうまくいった」ということになる。
例えば、イギリスは1920年には最も豊かな国でしたが、その後50年間の不景気を経て破綻しました。しかし、イギリスでは誰もが悲惨な目にあったわけではなく、ビートルズはうまくいった。イギリスは他の人にとっては良い場所ではなかったが、ビートルズにとっては祝福された場所だった。
だから私は、世界は大丈夫だと言いたい、この世界を理解している人にとっては。
So you tell the philosopher, the world will be better for those who understand the world.
おわり