5月2日のブルームバーグの記事によると、世界で一番米国債を保有している日本が、ここ3ヶ月間で600億ドル分の米国債を売却したそうです。600億ドルというと、日本円で約7兆円ほどにもなるため、かなり大量に処分したようにも見えますが、まだ保有額が1兆3,000億ドル分も残っていることを考えると、微々たるものでしかありません。
いずれは紙屑になる米国債であるわけですから、日本としてはこのまま売却を進めたいところだと思いますが、米国からしたら、属国日本に押し付けた紙屑を、日本が大量に売却することなど許すはずもなく、日本は近い将来、泣き寝入りすることになるでしょう。
日本ほどではないにしても、同じく膨大な米国債を抱える中国は、この問題をどのように考え、対処しようとしているのでしょうか。
中国ニュースメディア「52赫兹実験室」から「中国は1兆ドル以上の米国債を保有、割を食わないためには脱ドルしかない?」を紹介します。

多くの人は、中国が1兆ドルを超える米国債とドル準備高を抱えている理由をあまり理解せず、中国はできるだけ早いタイミングで全部売却し、近い将来の暴落リスクを回避すべきであると考えています。
しかしながら、これはそれほど単純な話ではなく、中国は米国債を買い、大量のドル準備高を維持せざるを得ない理由があり、そして他に選択肢がないのが現実的なところなのです。
この理由を理解するためには、まず米国のスイフト(SWIFT)決済システムの説明から始める必要があります。米国は、さまざまな国の商品輸出において米ドルが価格決定と決済の役割を果たすよう、国際貿易(グローバリゼーション)を発展させ、国内取引を最小化するよう促してきました。
その後、米国は、それらの国々の輸出の価格決定と決済に米ドルを使うよう強制し、商品の生産と輸出が米ドルに固定され、結果として、米ドルが信用裏づけとなる基軸通貨となったのです。
米国は、中国に対しても加工貿易の輸出型経済モデルの発展を強く支援し、大量の加工産業を提供することで、中国が世界の経済貿易に参加できるように後押ししました。しかし米国の本当の狙いは、中国の力強い経済発展を望んでいるのではなく、ドルが中国の国際貿易・国内取引において価格決定と決済の役割を果たし、ドルの地位を強固にし、維持できるようにするためなのです。
こうすることで、米国はドルによる世界金融覇権を背景に他国にノーと言うことができ、グローバル経済から利益を得ることができるのです。中国はドル紙幣と引き換えに膨大な量のモノを海外に輸出し、輸入もドルで支払われますが、輸出貿易が輸入を大きく上回った場合に、中国には大量のドルが残ることになります。しかし中国は手元にあるドルを使って、アメリカから買えるものがそれほどないため、ますます多くのドルが手元に残ることになります。
米国の銀行にドルを預けておいても利子はほとんどなく、仕方なく利回りが多少ある米国債を購入している状態なのです。

米ドルによる覇権で米国は、軍事的侵略、ハイテク、知的財産権、信用格付け等によって、世界のサプライチェーンを制御することができます。
現在の中国から見れば、ドルの覇権はまるで中国の実体経済の上に築かれているようで、米国経済は空洞化し、完全に金融化したものと映ってしまいます。中国が脱ドルにおけるリスクを回避する唯一の方法は、ドルでの取引を止め、ドルでの外資導入を止め、ドルの値決めや決済をさせないことです。今後、中国が脱ドル化に成功し、ロシアやイランなどの石油メジャーがすでに脱ドル化している以上、ドルの覇権の崩壊は時間の問題となるでしょう。これは米国にとって最も恐ろしいことであり、今一番の心配ごととなっています。米国は、中国のハイテクを抑圧し、中国経済を締め付けたい一方で、中国の巨大経済をうまく利用してドルを支えたいというジレンマがあるのです。
ドルの覇権を確保するために、アメリカは巨額の資金を投じて、新自由主義経済理論を中国に説く、いわゆる新自由主義経済学者を大量に養成しました。彼らは、米ドルを世界通貨とし、国際経済統合と世界市場のグローバル化の基盤とし、世界経済システムに統合するためにGDPを米ドルで評価し、国の自律的な経済・金融・市場主権を否定すると提唱しています。これが経済的自立が国家発展の基本であることを否定しようとする帝国主義的なドル覇権の核心なのです。中国は、多国間貿易国との協力、人民元決済システムの構築、脱ドルプロセスの加速によってのみ、ドルに搾取されることから逃れ、リスクを回避することができるのです。
おわり