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TikTokの競合「快手」が伸びている!ショート動画アプリによる芸能人の奪い合いが加速中

快手

上海の自宅から徒歩3分の場所に大型スーパーが2つあります。1つは10年前から営業している家楽福(カルフール)、もう一つは3年前にオープンしたアリババ系列の盒馬鮮生(ハーマー)。

私は昔からカルフールを愛用してきたのですが、2年ほど前から明らかに客数が減りました。勢いがあるハーマーに客が奪われているようで、活気があったパン売り場も夜には売れ残った大量のパンが半値で売られています。

もしカルフールが潰れてしまうと、ここぞとばかりにハーマーが値上げしてくるのは、火を見るより明らかなので、私は3回に1回はカルフールで食材を買っています。そうです、2回はハーマーです。

前回の記事「リーズーチー所属のエージェントも杭州、中国のインフルエンサーはなぜ杭州に集まるのか」ではインフルエンサーとMCNエージェントによるライブコマースについてお話ししました。

今回はそんなインフルエンサーが利用する動画プラットフォームについてのお話です。中国メディア「深燃」に「分断されるスターたち」という記事があったので紹介します。

記事の内容はこんな感じです。


アイドルの追っかけをしている「小可」さんは、人気アイドルグループ「TNT – 时代少年团」のメンバー「贺峻霖」の17歳の誕生日ライブを「快手」で見た次の瞬間、「微博」のホットトピック機能でアイドルたちが投稿した動画を見てニヤつき、さらに「ビリビリ」を開いて熱心なファンが編集した「まとめ動画」で見逃した「名場面」を追いかけながら、アイドルの「追っかけ」をやっている。

TNT – 时代少年团

彼女は「深燃」に、「以前は私が好きなアイドルのあらゆるシーンが1つのアプリで見ることができたけど、ショート動画アプリが増えた今は、アイドルの重要な瞬間を見逃さないように、複数のアプリを使い分けている」と語った。

これは意外と知られていない現象かもしれません。

中国インターネット情報センター(CNNIC)が発表した「第47回中国インターネット発展状況の統計報告書」によると、「2020年12月時点で、中国のネットユーザー規模は9億8900万人、インターネット普及率は70.4%に達した。中でもショート動画のユーザー規模は8億7300万人で、ネットユーザー全体の88.3%を占めている」そうだ。

ショート動画がインターネットのインフラのような存在になりつつある現在、情報の見せ方も画像から映像へと変化している。この過程で、ショート動画アプリは、大量のトラフィックと価値あるコンテンツをもたらすことができる芸能人やタレントを分断させている。タレントは各アプリのニーズに合ったコンテンツを制作してファンを惹きつけ、ショート動画アプリから利益を得ている。

これは特に新しい動きではない。ショート動画アプリが大躍進した2018年にタレントたちが続々と参入してから、すでに3年が経過した。

タレントたちはどのショート動画アプリに参入したのか。あるいはショート動画アプリはどのようにタレントを呼び込んでいるのだろうか。

タレントたちの大移動

とある芸能事務所の広報担当者が「深燃」の取材に対し、「ショート動画のアカウントを運営することは、今やタレントの日常業務の一部」と答える。彼女から見て「タレントたちがショート動画に参入した時期は3つに分けられる」そうだ。

第一段は、ショート動画アプリが急速に発展し、タレントが参入を始めた2018年〜2019年。第二段は2020年の流行期で、映画、テレビ業界が低迷し、代わりにショート動画アプリのトラフィックが急激に伸び、「快手」や「ティックトック」に代表されるショート動画アプリに多数のタレントが集まり、ライブコマースなどが展開されていた。

第三段階に入った現在、ショート動画アプリ間の競争は、トラフィックの獲得競争に留まらず、コンテンツの差別化でも激化している。例えば「快手」によるタレント枠の拡大戦略は明らかなものだ。

この変化は、データを見ればより明確だろう。

報告書「2020年ショートビデオの影響力、芸能人ソーシャルアセット」によると、「ティックトック」と「快手」の上位100名の芸能人のフォロワー増加率はそれぞれ18.8%と19.9%に達した。一方「微博」 の上位100名の芸能人が投稿する数は減少傾向にあり、20.1%も減少した。

しかし全体的に見ると「微博」の上位10名の芸能人が持つフォロワー合計数は9億6400万人に達し、カバーするフォロワーの数では優位に立っており、つまり「微博」はタレントが参入すべき必須なプラットフォームであるし、実際、多くのタレントが微博を通じて公式なメッセージを発表している。

タレントが「快手」や「ティックトック」に参入してまだ間もないが、これらアプリ側のトラフィック量増加のための努力により、フォロワーが増えるスピードは加速し、特に「快手」では、視聴者がより身近に感じれる面白いコンテンツにより、タレントは確実そして速くフォロワー数を伸ばすことができる。

タレントたちがショート動画アプリに初めて参入する際の選択肢はやはり「ティックトック」か「快手」だ。この二つを比較すると、一般人ユーザーの参入壁が低く、またフォロワーが集めやすい「快手」は、以前はUGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ)の姿勢で(つまり使い手側におまかせの状態)、タレントの参入はさほど多くはなかったが、2020年後半からはタレントの呼び込みに力を入れ始めたことで、急速にタレントのアカウント数が増えていった。

「快手」が「Data-Driven Engine for Marketing Growth」と共同で発表した「2021年快手エンターテイメント・マーケティングデータのレポート」によると、タレントの参入数は1500名を超え、ジャンルも豊富だ。

タレントコンテンツの1日の平均VV(Video View、動画再生数)は14億に達し、アプリを利用する視聴者の半数がアーティストやタレントをフォローしており、2021年3月にタレントが公開した動画の数は2020年10月と比較して60%近く増加した。活動の活発化は、タレントのフォロワー数にも反映されている。例えば、歌手の「黄子涛」は2021年に合計31本のショート動画を公開し、累積フォロワー数は2173万に達している。

「快手」が勢いを増すにつれ、タレントの参入も加速している。すでに参入したタレントの数はレポート発表直後に一新され、現在は1600名まで増えている。

「ビリビリ」や「小紅書」のデイリー・アクティビティは、「快手」や「ティックトック」ほどではないが、独特なコミュニティと雰囲気を持つプラットフォームであり、多くのタレントはこれらのプラットフォームにも参入している。

このようなタレントの大移動は、ダイナミックな動きの中で徐々に完成される。

タレントはなぜプラットフォームを移るのか?

シニアプロダクトマネージャーの「判官」氏によると、芸能人はより多くのトラフィックを求めるため、全体のトラフィックが一番大きいところに移動するそうだ。またタレントはビジュアル要素が強いため、画像より動画の方がファンとの距離感を近づけることができる。「画像はチームの助けを借りて作ることができますが、動画は少なくとも自分で撮影しなければなりません」。

また「判官」氏によると「ショート動画はインターネットのインフラになっており、実はタレントたちもショート動画の中毒者」だという。95年以降生まれのタレントの中には、特に広告などの縛りがない場合に、自らショート動画アプリを開いて創造力豊かなコンテンツを撮影する者もいる。

主要アプリのそれぞれの特徴は?

「王菜菜」さんは、アイドルがそれぞれのアプリに投稿した異なる内容の動画を通して、アイドルの別の側面を見ることができると感じている。例えば、彼女のお気に入りの「徐璐」は小さいころからダンスの英成教育を受けてきたため、「快手」の「舞蹈季」という活動によく参加している。彼女が投稿するダンス動画は「甘くてスタイリッシュ」だそうだ。

徐璐

「快手」、「ティックトック」、「ビリビリ」、「小紅書」を開くと、とあるタレントがとあるイベント絡みの動画を各プラットフォームに投稿したとしても、その動画の内容はかなり異なる。

あるアーティストの広報が「深燃」に語ったところによると、各アプリの戦略的な位置付けに合わせてアーティストは日常生活を投稿している。例えば、「ビリビリ」では日常生活のVlogを公開し、「小紅書」ではブランド品や日用品を共有し、「快手」ではリアリティがある面白い内容、「ティックトック」ではよりビジュアル的にキマッている内容といったところだ。「アーティストの個性や性格がどのスタイルに適しているか判断し、プラットフォームの雰囲気に合ったスタイルで参入プランを立てる」。

少し調べれば、それぞれのプラットフォームが異なるタレント枠を形成していることがわかる。流行り廃りを促進させることで消費を加速させる生活共有プラットフォームの「小紅書」は、「FUNJI」による統計データによると、参入している男女タレント比率は64:36となっており、女性タレントの方が高い割合を占めている。

「ビリビリ」のフォロワー数トップ20タレントの中には、「济公」の俳優である「游本昌」、歌手の「腾格尔」、「爱情公寓5(テレビドラマ)」でしか知られていない「諸葛大利」などがいますが、彼らは一般大衆受けするタイプのタレントではないし、特に若い人たちからの支持率が高く、2次創造に利用されることが多いタレントは「ビリビリ」での人気も高い。

腾格尔

「快手」は2種類の枠でタレントを囲い込む戦略に

1つ目の枠は「周杰伦」、「陈坤」、「秦昊」、「杨幂」、「黄子韬」、「迪丽热巴」、「时代少年团」、「INTO1」などに代表される従来の芸能人、そして2つ目の枠は「冯巩」、「潘长江」、「宋小宝」、「王小利(刘能)」などに代表される新しいネットタレント。後者は「快手」の中で成長しており注目度も高まっている。それぞれ異なる特徴を持った2種類のタレント枠が存在している。

この2種類の枠でタレントを囲い込む戦略が進められた理由は、「快手」の包括的かつ独占的なプラットフォームの特性に関係している。

周杰伦

「快手」が2020年後半にタレントの呼び込みを強化する前は、一般「快手」ユーザーはお笑い芸人に好意的だった。これらのお笑い芸人は、一般人が慣れ親しんだ作品を持っているため、「快手」のユーザーが好むお笑い動画のコンテンツを制作することができ、その結果、膨大なトラフィックを獲得した。これはお互いに補完し合う関係だ。プラットフォームにとっては、特徴的な芸人枠を形成することができた。

2020年後半、「快手」はこの特性を維持すると共に、メジャーな芸能人との協力を強化にも力を入れ始めた、と「快手」のエンターテイメント・芸能人ビジネス担当者は、メディアとのインタビューで明らかにした。どのセレブリティが急速にフォロワーを増やしているか調査したところ、従来の芸能人も「快手」の中で成長する新しいネットタレントも競合することなく、それぞれが異なる特性を生かしてフォロワー数を伸ばしていることがわかったため、「快手」は2種類の枠の戦略に攻勢をかけることにした。

これは「快手」の生態の包括性を反映したものだ。結果を見ると、メジャーな芸能人たちも「快手」に根付いて活動している。データによると、2021年3月、「快手」の芸能人が投稿した動画の数は2020年10月に比べ、60%ほど増加しており、「杨幂」、「徐璐」、「孟美岐」、「程潇」、「郑恺」、「岳云鹏」などの芸能人が「快手」の特徴を上手く組み合わせて独創的な動画コンテンツを多数投稿しているし、大人気の「INTO1」や「时代少年团」のライブストリーミングは度々最高値を更新している。

中国の東北地方の「赵家班」のタレント、ネット販売のインフルエンサー「王耀庆」、「杨子」、お笑い芸人の「潘长江」、「冯巩」などは、他のプラットフォームに比べて「快手」でより高い注目を集めた。

約3年間の移行期間を経て、主要なショート動画プラットフォームは独自のスタイルや特徴的な環境を形成してきた。

杨幂
潘长江

※「杨幂」と「潘长江」など、まったく異なるタイプのタレントが「快手」で活動している。

タレントの呼び込み合戦は終わらない?

「文渊智库」の創始者である「王超」氏によると、「現在、タレントたちは彼らの大きな影響力を動画という形でアウトプットするためにショート動画アプリを利用しているが、彼らは特定のプラットフォームに留まることはない」そうだ。

発信する情報が画像から映像に変わっても、タレントとプラットフォームの関係は変わらない。 あるアーティストの広報担当が「深燃」に語ったところによると、タレントによる「プラットフォーム」の検討は、「広報の観点とアーティストの長期的なビジネスの観点に基づいており、目的は露出を高めて知名度を向上させることである」そうだ。写真でもショート動画のプラットフォームであっても、タレントたちは常に安定したリターンをもたらしてくれ、さらにスタイルや性格に合っているプラットフォームを選択する。

ショート動画プラットフォーマーがタレントに何を提供できるのかがとても重要である。

これはプラットフォーマーも熟知している。あるプラットフォーマーは、より若い層との近い距離感でタレントを惹きつけ、またあるプラットフォーマーはタレントとブランド企業をマッチングさせるためのリソースを提供する。

他のショート動画アプリと比較して、「快手」は一般人が日常生活を記録し、共有することに重点を置いているため、投稿者と視聴者との距離を縮めることができる。これはタレントとファンの関係でも変わらない。「快手」のスタイルで日常の一片を撮影し投稿することで「快手」のエコシステムに素早く入り込み、ファンとの身近な交流が可能になる。

例えば、従来の芸能人の枠では「TNT – 时代少年团」メンバー個人のショート動画アカウントが「快手」に登場し、ファンとのよりダイレクトな交流のために活用されている。誕生日パーティーを独占的にライブ配信し、他のメンバーとも様々な形で交流している。

元「EXO – M」メンバーの「黄子韬」は、「快手」上で音楽を共有し、ライブストリーミングで歌を歌い、アプリの魔法のような表現機能を使って、より立体感があるイメージを作ったりもする。芸人の「岳云鹏」は、顔パックを着けたままして夜の街を歩いたり、「德云社」(お笑い番組)のバックステージで「メロンの種の競争」のショート動画を公開したり、よりリアリティある生活的な側面を見せる。 

これは「快手」という環境の中で育まれた長所だ。タレントたちにどのように「遊んでもらうか」という点で、「快手」は「嗨嗨星朋友」キャンペーンを展開し、4月〜6月で66名のタレントがライブストリーミングを行い、「快手」による初のブランド化かつシリーズ化が可能な長編ライブストリーミング・エンターテインメントIPを作ろうとした。

プラットフォームが写真からショート動画に移行する中で、ユーザーのニーズを理解し、タレントとファンをうまく結びつけ、さらに、より多くの収入機会が提供できるプラットフォーマーだけが競争力を維持することができる。このタレントの呼び込み合戦はまだまだ終わりそうにないが、最終的にどのプラットフォーマーがタレントたちの動きを止めることができるのか、わかるのはまだもう少し先になりそうだ。

おわり


2016年、私が経記人(エージェント)をしていた頃はストリーミング動画アプリの群雄割拠の時代でした。「ビリビリ」にライブストリーミング機能が追加され、これ一択で大丈夫だろうと思っていたら、「斗魚」、「虎牙」、「熊猫」など新手のライブストリーミングアプリが次々と現れ、ネットアイドルやライバーたちもどれが良いのか判断がつかないため、とりあえず全部試してみる、とスマホを3台並べてストリーミング動画を配信する、なんて時期だったのです。

その後いくつかは破産、いくつかは合併、消滅などをくりかえし、現在の「ビリビリ」、「ティックトック」、「快手」の三国時代に落ち着いていったというのが動画アプリの歴史です。

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