中国メディア「深燃」から「ビッグテックを夢中にさせ、巨額投資を集めるメタバースとは?」を紹介します。
メタバースに関する新しいニュースが業界に衝撃を与えている。
8月12日、米エヌビディアが4月に開催したプレスリリースで、ジェンセン・ファンCEOのスピーチの14秒間がデジタル合成された彼のダミーが出演していたことを明らかにした。ダミーのジェンセン・ファンは、4ヶ月間、誰にもバレなかったのだが、それほどリアルなものだった。
あるネットユーザーは「これがメタバースなのか」と書き込んでいたが、メタバース関連の複数の関係者によると、これはAIとイメージング技術のブレイクスルーであり、「メタバースには程遠い」そうだ。
すべてが「メタバース」に向かっているとも言われているが、2021年は、メタバースという概念がかなり熱いトピックになっていることは確かだ。
少し想像して頂きたい。あなたは「ワイルド・スピード」の主人公のようにレースをして遊んでいる。背後から「ジュラシック・パーク」のティラノサウルスや「キングコング」のゴリラが追いかけてくる。ゴールするために頭をフル回転させ、お気に入りの女の子に体を触られると、体感ボディスーツを着ているあなたは、実際に鼓動の高まりを感じることができる。
これは、映画「レディ・プレーヤー」のワンシーンで「メタバース」がどのようなものか示している。しかし複数の関係者は「それはずっと先のことであり、今の段階で話すべきことではない」という。
それでは、もっと現実的なところから始めるとしよう。
「メタバース関連企業の上場第1号」であるRoblox(ロブロックス)が、今年3月、ニューヨーク証券取引所に上場し、初日の株価が54%も高騰し、8月時点で、時価総額は478億米ドルまで跳ね上がった。同社の目論見書に盛り込まれた「メタバース」という概念には、巨額投資が流入し、ビッグテックたちも開発を進め、ソーシャルメディアでは話題沸騰中と折り紙つきだ。
関連企業が上場し、概念が注目を集め、多くの熱狂者がメタバースについてあーだこーだ議論を交わしているが、「メタバース」は人によって解釈が異なる。

ロブロックスが目論見書で示した定義には、アイデンティティ、友達、没入感、低遅延、多様性、時間や場所を問わない、経済圏、文明という8つの要素が含まれている。そしてこれらの要素にはそれぞれに長い説明がある。つまり、一言では言い表せない曖昧な概念であるということだ。
メタバースに関わる起業家、投資家、アナリストたちに話を聞き、次の質問を投げてみた:メタバースとは?メタバースを盛り上げているロブロックスとは?ビッグテックたちはどのようにメタバースと関わろうとしているのか?メタバースは実現可能なのか?
理想のメタバースと現実のメタバース
ジェンセン・ファンCEOのデジタル合成はメタバースとは直接関係ないが、中国で最もメタバースの概念に関係した某ゲーム会社のプロジェクトマネージャーである劉冬(リュウ・ドン)氏は「テクノロジーの進歩に人々が驚くからこそ、ニュースが大きな話題となる。しかし、テクノロジーの進歩により、誰もがメタバースに近づくことになるのは確かだ」と言う。
具体的にはどのように近づくのか?
1992年に発表されたSF小説「スノウ・クラッシュ」から生まれたメタバースという言葉は、広大な仮想現実の世界で、人々は人型アバターを操り、互いに競い合って自分の地位を向上させる様子を描いたもので、今でも時代を先取りした未来の世界を表現している。
メタバース関連のベテラン起業家である王涛(ワン・タオ)氏は「いわゆるメタバースは、実は昔から人間社会に存在していて、人間は、現実の生活に加え、発想によって別の空間を構築し、発想と発想の交流と伝達によって、伝統と文化を形成してきた」と考えている。彼の意見では、どの時代でも高度なコミュニケーション方法が求められ、例えば「コンテンツ形態」では、昔人々はグラフィックによって情報を得ていたが、現在は動画やショートビデオが一般的だ。「伝達形態」では、昔人々はテレビ画面で情報を得ていたが、その後、より没入感のあるVR技術が生まれた。

文章、言語、文学、映画からショートビデオまで、「これらはすべて伝達であり、時代が進むにつれ、伝達は情報をより早く表現する方向と、特定のシーンをより没入的に表現する方向の2つに発展している」とワン・タオは言う。
そして、情報の表現が早くなり、没入感が増すほど、メタバースの成熟した形に近づいていく。そこで現在、コンテンツ形態としては、ショートビデオに加えて、より想像力に富んだデジタル・シミュレーション技術が注目されている。また伝達形態では、より没入感のあるVRやAR、ホログラフィック技術が飛躍的に発展している。
これは、メタバースを広く説明するためのマクロな視点だ。メタバースが初めて資本市場に登場したのは、ロブロックスの目論見書だった。これは、現時点で目に見える形で、メタバースの概念に最も近い製品と言えるだろう。
公式情報によると、この製品はゲームのUGC(ユーザーによって作成されるコンテンツ)プラットフォームだそうだ。プレーヤーは自分のオリジナルゲームを開発したり、他人が開発したゲームで遊んだり、Robuxと呼ばれる仮想通貨で特定のゲームへのアクセス権を購入したり、またはバーチャル・キャラクターを購入したりすることができる。

ロブロックス・プラットフォームの経済圏:クリエイターが開発したコンテンツがリッチで楽しいものであればあるほど、現金化する能力が高くなり、バーチャルなソーシャルネットワークが活発であればあるほど、ユーザーはより多くの頻度でより長い時間滞在する。
ロブロックスを開くと、少し前に大流行した「マインクラフト」とゲームのスタイルが似ている。マインクラフトは、マイクロソフト社が運営しているオープンワールドゲーム(プレイヤーが仮想世界を自由に歩き回り、いつ、どのようにタスクをこなすかを選択するタイプのゲーム)だ。

「三体」の小説のファンがマインクラフト・エンジンを使って「三体」の物語をアニメーション「我的三体」にして国内で話題となった。また、カリフォルニア大学バークレー校では、理事長挨拶、学位授与、帽子投げなどの行事プログラムを取り入れたバーチャル卒業式をマインクラフト内で開催した。
三体はSF作家の劉慈欣が書き上げた長編SF小説。
このような例は、この種のオープンワールド・ゲームの魅力を説明するのに役立ち、ロブロックスとマインクラフトのようなオープンワールド・ゲームとの間で比較できる部分は多い。
しかし、この2つのタイプのゲームは「実際には似て非なる」とワン・タオは語る。
マインクラフトは、プレイヤーが物を開発してモデルやシーンだけを作る、他のユーザーと共有して遊んでもらう機能のない1つのコンテンツのゲームであるのに対し、ロブロックスは、クリエイターが他のユーザーにとって魅力的で、お金を使いたくなるようなゲームを作るプラットフォームだ。
ロブロックスで話題のゲーム「Adopt Me!」は、プレイヤーが作成したシミュレーションゲームで、他のプレイヤーが里親となってペットの世話をすることで、ペットの服や家族のための家具を購入できる仮想通貨Robuxを獲得できる。
ワン・タオによると、ロブロックスでは、プレイヤーは作成したゲームに対して適度な報酬を得て、他のプレイヤーに時間を消費させ、プラットフォーマーであるロブロックスは取引の手数料(プラットフォーム費用の26%と手数料の24.5%の合計50.5%)を徴収するという。これが、他のオープンワールド・ゲームとの最大の違いであり、ロブロックスが「ユニバース」と呼べる理由でもある。
例えて言うなら「コンテンツの発信と交流にデジタルツイン技術が使われるビリビリ動画」のようなもので、ロブロックス・クリエイターはビリビリ動画のUP主であり、動画を制作する代わりに、他のユーザーが遊べるゲームを制作しているのだとワン・タオは説明する。
「ロブロックス(Roblox)って何だ?メタバースについて中国の関係者が語る(下)」に続く