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バイトダンスが展開する企業コラボレーション管理ツールLarkはDingTalk、企業版WeChatを超えることができるか

Lark

日本で一般的に使われている企業コラボレーションツールだと、ビデオ会議だとZoom、Webex、Microsoft Teamsあたり、チャットツールだとSlackやサイボウズあたりが主流だと思いますが、では中国ではどのようなサービスが使われているのでしょうか。

この辺りの情報は日本でもあまり知られていないため、一度まとめて紹介しようと思っていましたが、ちょうど良い記事がありました。

中国メディア「虎嗅App」から「Larkはバイトダンスの奇跡でドル箱に化けるか?」を紹介します。


先日行われたLarkのカンファレンスで、企業コラボレーション管理ツールLark(ラーク)のCEOである謝欣(シエ・シン)氏が、月間アクティブ量を見る限りLarkは2Cに最適だと強調していた。

2Cから2Bに打って出るLark

数ある企業向けコラボレーション管理ソフトウェアの中でも、Larkはユーザーエクスペリエンスを非常に重視している。Larkの画面表示はPC画面やスマホ画面はもちろんのこと、プリンターでの印刷にも最適化されており、簡単に操作して共有することができる。

残念ながら、誰もが気軽に使って評価できるわけではない2B市場では、2B製品の評価は、経営者や管理者の手に委ねられているため、アメリカでは「ドッグフード」と呼ばれている。

Larkは2C市場にアプローチした手法を使って2Bに打って出ているが、この手法での主要ターゲットはインターネット関連スタートアップ企業になるだろう。

一般的にスタートアップ企業では、経営者と社員の距離感が近く、上司は生産性向上ツールのユーザーエクスペリエンスを重視する。スタートアップ企業とはいえど、その声は侮れない。中国EVベンチャーの三銃士、蔚来(NIO)、理想(Li Auto)、小鵬(Xpeng)はいずれもLarkユーザーだ。

Lark5.0エンタープライズ管理プラットフォームがリリースされた

2Bソフトウェアのアウトプットは、経営理念のアウトプットを意味する。バイトダンスはこの市場に比較的早い時期から登場していたものの、知名度はまだ限定的かもしれない。

Larkを主要製品とした開発チームの最近の再編は、バイトダンスが2B市場に向かっていることの裏付けだろう。この開発チームは、CEOの梁汝波(リャン・ルーボー)氏と大量のストックオプションを持つベテラン社員が中心となって結成されており、当初はアウトプットが少なく、退職待ち部門のように見られていた。

Larkは2016年にスタートし、ずっと社内専用ツールにとどまっていたが、去年、無料で公開された。この頃、バイトダンスはすでに、テンセント、アリババに次ぐ第三の巨人となっていた。

2020年は企業管理ソフトウェアが爆発的に普及した年だった。

上海アイリサーチコンサルティングによると、2021年6月には、中国のオンライン・オフィスのユーザー数は3億8,000万人を超え、利用率は2020年6月の21%から37.7%に急上昇した。

アイリサーチコンサルティング提供

在宅勤務の需要が急増している中、Larkは業界3位に位置し、市場での評価を得ている。しかし、易視千帆データによると、今年10月のDingTalk(アリババ)の月間アクティビティは1億5,300万件、企業版WeChat(テンセント)は7億件、Larkは62万9,000件であった。これがCEOのシエ・シン氏が会議での月例活動状況に積極的に応じなかった理由である。

Larkが、現在のスタートアップ企業をターゲットとした営業活動を成熟した大企業にも拡大しようとするならば、必然的に、高度なカスタマイズが要求されるプロジェクトを引き受け、また、全方位型の製品ラインを顧客に提供しなければならないだろう。

しかし、今月初めに発表されたバイトダンスの最新の体制に沿って運営すると、Lark部門とボルケーノ・エンジン部門の間で事業が重なり、内部対立が発生してしまう。

もしLarkが製造業のような伝統的な業界にも営業をかけたいと考えているとしても、製造業の社長たちの考えは、Larkの「先進的な生産性」の要件を満たすことは絶対にないため、そのような顧客にLarkを受け入れてもらうにはどうすればよいだろうか。

数千人の社員を抱えるLark部門は「少数精鋭」を目指して作られているわけではないことは明らかだが、顧客との企業文化の衝突は、しばしば解決が最も困難なものとなる。

大群vs少数精鋭

Larkの弱点こそがDingTalkの強さなのだ。

高度なカスタマイズが要求されるプロジェクトにおいてDingTalkは、Alibaba Cloud部門を頼ることができる。承認、既読、出退勤時刻などの「厳しい管理」を重視する伝統産業の嗜好にもDingTalkであればカスタマイズして対応することができる。これらはすべて、あらゆる分野の中小企業にサービスを提供してきたアリババの長年の経験の賜物だ。

Alibaba Cloudは、一足先に中小規模の顧客にサービスを提供しており、それがDingTalkへのアクセス元となっている。

またDingTalkのようなコラボレーションソフトウェアは、IaaSレイヤーに乗っかるAlibaba Cloudのアプリケーションに特化したSaaSやPaaSと重なることがわかっている。そのためAlibaba CloudとDingTalkの統合により、社内対立も避けることができる。

DingTalkと正反対なのがLarkで、たとえ上司を説得することが出来ても、社員からの反感が強いことがある。このため「先進的な生産性」はDingTalkの選択こそが正しいという方向に流れるわけだ。

企業版WeChat

企業版WeChatはこれらの中間に位置している。WeChatの膨大なユーザー基盤によるバックアップのおかげで、企業版WeChatはコミュニケーションの場面で優位性があり、営業やカスタマーサービスなど、社外のお客様と頻繁にコミュニケーションを取る業界に選ばれやすいツールとなっている。企業が独自のプライベート・ドメインのトラフィックで勝負したい時も、当然、WeChatを使うことになる。

業界首位のDingTalkがマネタイズを加速させたのは去年、Larkが市場の食い込みに忙しかった頃だ。

膨大な数の中小企業ユーザーはDingTalkの改善に貢献し、大企業はDIngTalkの収益拡大に貢献したと言える。

中小企業は価格に敏感で購買意欲が低いため、アリババは大企業をターゲットにしてきた。昨年、政府のDingTalkを担当していた叶軍(イェ・ジュン)氏が、大口顧客の経験を生かして、陳航(チェン・ハン)氏に代わってDingTalkの指揮を執った。

現在、DIngTalkの収益は主に3つに分かれている。1つ目はハードウェアの販売、2つ目はDingTalkのカスタマイズ、3つ目はSaaSの販売による収益だ。

業界No.2であるWeChatはまだ本腰を上げているとは言えない状態だが、実は背後にはキラーアプリが揃っている。

すでに2億人近いユーザーを持つTencent Meetingは、WeChatやQQ以外で最も短期間で1億人のユーザーを突破した製品で、2019年12月25日にリリースされ、1億人目のユーザーを収穫するまでにわずか245日しか経っていない。

企業版WeChatの次期バージョンでは、ユーザーは企業版WeChatのグループチャットで直接Tencent Meetingsを開始できるようになる。これをきっかけに、両サービス間に高い相乗効果が生まれることは間違いない。

Tencent Meeting 3.0の開始

これら3つのソフトウェアの違いは、各部門の人数にも表れている。DingTalkは2,000人程度、企業版WeChatはわずか700人程度に対し、Larkは製品開発だけで3,000人以上を抱えている。これはテンセントの企業版WeChatはもちろん、WeChat事業部門全体よりも多い。

人数が限られているため、DingTalkや企業版WeChatは全方位で事業展開をするのではなく、Alibaba CloudやTencent Meetingとの連携を頼りにしている。一方、Larkの大規模なチームは、当然ながら事業範囲を拡大したいという気持ちがあるため、今後、ボルケーノ・エンジンと衝突する可能性が高い。

バイトダンスは「奇跡は多大な努力から生まれる」と信じている。ティックトックの広告事業で収益が急拡大たこともあり、バイトダンスは瞬く間に11万人以上の社員を抱えるまでになった。こうして見ると、Larkチームは実はそれほど大きな存在ではなく、全社の10分の1以下の人数でしかない。

人員が多いことのメリットは確かにある。10人の小さなチームでできる機能に対して、Larkは何百人もの人員を投入することができ、その結果、注釈機能の線の太さや円の大きさなどの細かい部分が繰り返し改善することができた。

収益はあまり期待できない

Larkの大規模攻撃は、張一鳴前CEO時代の産物である。しかし、年初に張一鳴氏が引退し、共同創業者の梁汝波が引き継いだ。梁汝波元CEO時代の始まりは、バイトダンスのスタートアップ時代の終わりを告げるものでもあった。

今月初め、バイトダンスは組織の大規模な再編を行い、巨大企業のような組織構成となった。ティックトック部門はテンセントPCG部門に相当し、Lark部門は企業版WeChat部門、ボルケーノ・エンジン部門はテンセントCSIG部門を、朝夕光年部門はテンセントIEGにそれぞれ相当する。

Larkはスタートアップ企業の顧客をつかむことができる。バイトダンスが成し得た急成長の実績がそれを後押ししている。企業の意思決定者の最終的な目標は収益の拡大であるため、企業向けソフトウェア市場は必然的にコンサルティング的な性質を持っているからだ。当然、Larkも、顧客の役員たちの質問にうまく答えることができるだろう。

Lark 5.0エンタープライズ管理プラットフォームの発表

ファーウェイがIBMの先進的なマネジメントを信じて、同社のエンタープライズソフトウェア群を導入したように、過去10年間で最も目覚ましい成長を遂げた中国の奇跡バイトダンスは、テンセントとアリババの2大巨頭をもしのぐ勢いで、多くの新進気鋭のスタートアップ企業に絶対的な説得力を与えている。

試行錯誤を繰り返してきたバイトダンスのフラットな組織は、まさに起業家たちが求めていたものであり、Larkはこの組織構造の導入を加速させるツールであると考えている。

しかしながら、状況は変わりつつある。

「界面新聞」によると、今月18日、バイトダンスのプロダクト事業部門が全社員会議を開き、その中で、ティックトックの広告事業がこの半年間で伸び悩んでいることが明らかになったという。しかも、かつてバイドゥに挑戦した「今日頭条」は、赤字の危機に瀕してさえいる。メディア「第一財経」からの確認依頼に対し、バイトダンスは「ノーコメント」としている。

予想外ではあるが、だが納得はできる

インターネット広告では、Eコマース、ゲーム、教育が常に3大収入源となっている。教育分野の広告は、下半期はほぼゼロだったことに加え、不動産市場の冷え込みが続いていることや、パンデミック再発による観光産業への影響もあり、強い規制の対象となっている広告が急減しているのは当然のことだ。

テンセントとバイドゥは第3四半期の業績を発表したばかりだが、彼らの結果もこのことを裏付けている。

第3四半期のテンセントのオンライン広告収入は、前四半期比で1%減少した。バイドゥの前年同期比成長率は、第1四半期の27%、第2四半期の18%から6%に大幅に低下したが、前四半期比では2%の成長となった。バイドゥ最高戦略責任者である余正钧(ユ・ジェンジュン)氏は、第4四半期には広告収入がさらに減速するだろうと述べている。

しかし、ティックトックを活用したライブコマースはかなり貢献しているはずだ。そのため「界面新聞」の報告書には、ライブコマース広告事業が含まれていないと思われる。

終わったばかりの双11(ダブル・イレブン)では、ECプラットフォーマーたちは一時期ほどの勢いは失ってしまったかのような立ち振る舞いをしていたが、ライブ動画で商品を見せながら販売するライブコマースは避けて通れない焦点だったようだ。著名ライバーの「薇娅」と「李佳琦」は、プレセール初日に200億元を売り上げただけでなく、ホットキーワードでL’Oreal(ロレアル)を固めるなど、依然として中心的役割を果たしている。それに対し、ティックトックの「羅永浩」と快手の「辛巴家族」は存在感がほとんどなかった。

プラットフォーマーも同じように動いている。Tmallと京東がレポートの発表した内容によると、ダブル・イレブンの取引総額はそれぞれ543億元と3491億元だった。しかし、ティックトックと快手は発表すらなかった。

また「晩点LatePost」によると、快手のEコマース取引額は、ダブル・イレブン前夜に今年のGMV目標を8,000億元から6,500億元に引き下げたそうだ。

こうしてみるとティックトックの1兆元のGMV目標もほぼ不可能なように見える。

果たしてLarkは期待の星になり得るだろうか?しかし、同社CEOのシエ・シン氏が先日のカンファレンスに出席し、「収益を圧迫しないでくれてありがとう」と感謝の言葉を述べていたことは頭に入れておいてもよいかもしれない。

おわり


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